久々に電波関連のBlog更新と参ろう。
さて、読者の皆さんの中に既に薄々と、
お気づきになられた方もいらっしゃるかと思うが、
お店でお買い物をしている時、
AM放送を店内に流しているお店に入った際に、
物凄く音質がFM放送並みの、
クリアな放送を聞いた事がないだろうか?
嘗て、AM放送と言うと周波数の特性から中音質で、
トラックドライバーや中高年向けの専用放送で、
夜間帯に入ると外国波からの混信もあって聞きづらい
のイメージが色濃かったが、
最近ではどうも勝手が少し違ってきている様で、
平成27(2015)年12月07日から、東京等の首都圏域でスタートした
AM放送の一部FM化が始まっているのである。
今回は、AM放送の難聴対策として、
全国各地への普及に向けて始まっている、
『FM補完(ワイドFM)放送』 この話題について、
取り上げる事にしよう。(^-^)/
(昨年の12月07日から、首都圏域のAM放送3局を中心に
スタートしたAM放送のFM放送波による同時放送。
音質もクリアで、大都市圏での高層ビルの影響で、
難聴に悩まされているAM放送波マニアには、朗報。(‐^▽^‐)
既に、大型家電ショップのオーディオコーナーには、
この垂れ紙が掲げられていて、既にお気づきの方も…。(^-^)/)
【FM補完放送は、周波数再編成の一環】
そもそも FM補完中継波放送 とは、
テレビ放送の地上デジタル化によって空いた、
90~108MHz帯(旧1ch~3ch)の周波数再編成の一環 で、
90~95MHz帯を主にAMラジオ局に割り当て、
災害対策や外国局の混信、
地形的な難聴対策として使われている。
因みに現在、コミュニティFM局は全国に280局以上あり、
地域によっては、
新規開局の割り当て周波数の不足が懸念されている。
その問題を解決するために、
既にコミュニティFM局への割り当ても始まっており、
更に東京地域などの、
旧アナログテレビ周波数のガードバンドとして割り当てられなかった、
85~90MHz帯が、コミュニティFM局へ向けて解禁になっていて、
地方では割り当てられていた85~90MHz帯が、
全国割り当てになっている。
これまで国内ラジオ放送の勢力図を二分していた、
AMラジオ放送とFMラジオ放送の城壁が崩れ出した瞬間でもあり、
FM補完局の開局の影で、
AMラジオ放送の NHK第1放送・京都放送局(JOOK/621kHz) が、
平成27(2015)年02月02日の01:00を以って閉局 し、
同じ関西圏である、NHK第1放送・大阪放送局(JOBK/666kHz) に
放送受信エリアが集約変更 された。
平成27(2015)年は割り当て周波数が拡大したFM波を中心に、
ラジオ界がソフト&ハードともに、大きく変わる第一歩となった。
(これまで、AM放送は、531~1602kHz。
FM放送は、76~90MHzと完全に城壁で、
住み分けされていたが、遂にAM放送波が、
旧アナログテレビ放送が使っていたVHF-Low Band帯
進出に伴い、その城壁が崩れ始めた。( ゚ ▽ ゚ ;))
( 『ワイドFM』 解禁の裏で、こんな事態も…。Σ(゚д゚;)
昨年の02月02日、01:00を以って、
NHK第1放送・京都放送局<JOOK>が、放送を終了。( ゚ ▽ ゚ ;)
NHK第1放送・大阪放送局<JOBK>に、
放送エリアが集約された。\(゜□゜)/
既に、AM放送好きや BCL(※) マニアの方は、ご存じの筈。)
【用語解説】
※…BCL
BCL(ビーシーエル)とは、
英語: Broadcasting Listening / Listeners の頭字語である。
放送(特に短波による国際放送)を聴取して楽しむ趣味を指す。
日本では昭和45(1970年)代中頃から昭和55~58(1980~83)年代
初めに掛けて中学生・高校生を中心とした一大ブームが起った。
多彩な各放送局オリジナル・デザインの、
ベリカード(受信証明証)収集の魅力は若者を惹き付けた。
しかし外国語の放送を楽しめるだけの語学力がなければ、
ベリカード収集後の目標が無くなってしまい、
その後ブームが下火になった原因ともなったが、
東日本大震災後、ラジオの有用性が見直され、
平成23(2011)年現在、国内では、欧米同様、
BCLは大人の趣味として(かつての中高生らが成人になり、
再びBCLを再開したため)根強い人気を保っている。
国際放送各局の番組担当者によれば、
日本では平成12(2000)年以降、いわゆる「復活組」と言われる、
30~60歳代の参入により、BCL人口は再び増え始めている。
【 『ワイドFM』 とはFM補完放送の愛称】
平成27(2015)年12月07日に、
東京でAMラジオ局のワイドFMの放送がスタートしたのを皮切りに、
ワイドFMとは、FM補完放送により親しんで貰うために、
東京の民放AMラジオ局3社(TBS、ニッポン放送、文化放送)が、
『ワイドFM』 という愛称を制定したものである。
『ワイドFM』 ことFM補完放送は、都市型難聴や外国波混信、
災害対策などのため、
AMラジオ局に対してFM波の割り当てを行うもので、
正式名称を「FM補完中継局」と言い、
同時放送が基本のためコールサインは割り当てられていない。
ワイドFMは、地上波テレビ放送が完全デジタル化した事により、
空白となった90~95MHzが割り当て周波数で、
旧アナログテレビ音声が受信可能な、
90MHz以上の周波数に対応した、FMラジオが必要 になる。
(AM・FM放送が聴ける旧式のラジカセ・タイプで、
90~108MHz表示。
嘗ての旧アナログテレビの1ch~3chまでの、
テレビの音声が聴けるタイプのラジオであれば、
『ワイドFM』 に対応出来る ため、
そのままの状態で聞く事が出来る。ヾ(@°▽°@)ノ
但し、一部機種(出荷時にプリセットされている等)では、
聴取は出来ない。。゚(T^T)゚。
また 76~90MHzまでしか表示されていないものは、
残念ながら、 『ワイドFM』 を聞く事が出来ない。o(TωT )
既に多くのメーカーから 『ワールドチューナー』 等の名称で、
ワイドFMが聴ける多くのラジオが販売されている。≧(´▽`)≦)
【FM補完放送でAMラジオが高音質に】
AMラジオ放送が、高音質のFM波で聞けるFM補完放送。
FM放送波送信の実績を持つ北日本放送(富山)90.2MHzを皮切りに、
南海放送(愛媛)や秋田放送(秋田)、南日本放送((鹿児島)では、
既にAM波とのサイマル放送を開始している。
そして平成27(2015)年12月07日からは、
在京3局が東京スカイツリーからの送信を開始した。
FM補完放送の開始はAMラジオ放送界にとって、
平成04(1992)年のAMステレオ放送以来の、
ビッグニュースであり、今後対するFMラジオ放送界にとっては、
バンド内に強力なライバル局が登場した事により、
若年層リスナーを多く抱えているFM放送業界に於いては、
正にウカウカしては、居られない状況になりつつある。
(旧 アナログテレビVHF-Low Band帯の使用周波数は、
各地域によって、用途に応じて違ってくる様なので、
読者の皆さんお住まいの地域はどうか、
今ひとつご確認を…。(b^-゜))
『ワイドFM』 のサービスエリアを年次毎に順次拡大。
平成32(2020)年には、全エリアでワイドFMが聴取出来る。
テレビの地上波完全デジタル化に次いで、
放送業界は新たに今度は、AMとFMの同時(サイマル)放送 と、
正にラジオ放送業界のビックバンの到来か。
因みに AM放送の完全終了は一切ないので、
ご安心を…。(-。-;)
AM放送を従来のAM波で聞くか、FM波で聞くかは、
今後は受信者自身の手で決められる 事になる。
日中帯、朝夕帯、夜間帯のそれぞれの時間、
電波の受信状況に応じて、
「AM波が聴きやすい」 か、「FM波が聴きやすい」 かは、
あなた自身の手で選択出来る 事に。(b^-゜))
(各都道府県毎の割り当て周波数は、既に発表されている。
但し、まだ開局していないエリアは、
これから順次、年度次計画毎に、
お住まいの地域の管轄の放送局から発表される。(^-^)/)
【ワイドFMが放送している周波数】
ワイドFMが放送している周波数は、TBSラジオが90.5MHz、
文化放送が91.6MHz、ニッポン放送が93.0MHzで、
何れも東京スカイツリーから送信されている。
『ワイドFM』 は本来、平成27(2015)年の春に開始の予定だったが、
東京スカイツリー営業開始後のアンテナ工事になったため、
放送開始が半年以上遅れて、
同年の12月07日からの放送開始となった。
ワイドFMに関しては、
大阪の民放AMラジオ3社(MBS、朝日放送、ラジオ大阪)が、
『まいど!ワイドFM』 というキャッチコピーでPR展開中で、
こちらは、今年中(2016)に、
ワイドFMによる放送をスタートする予定である。
また、全国各地域に於いても順次実施の予定である。
【VHF-Low Band(90~108MHz)帯の再編成で
FM補完放送のほかコミュニティFMも参入】
テレビ放送の地上デジタル化完了によって空いた、
VHF-Low Band(90~108MHz)帯の周波数再編に伴う、
新しいバンドプランの割り当ては次の通りである。
【90~95MHz】
民放AMラジオ放送局のFM補完放送や外国局による混信対策用、
災害対策用として割り当てら.れる他、
コミュニティFM放送局にも割り当てが開始。
NHKの難聴対策としても検討中。
■… TBSラジオ(90.5MHz/7kW)、
文化放送(91.6MHz/7kW)、
ニッポン放送(93.0MHz/7kW) が、現在運用中。
【95~99MHz】
90~95MHz帯のFM補完中継波などのラジオ放送波と、
99~108MHz帯のマルチメディア放送が、
相互に混信しないよう 「ガードバンド」 とされ、
基本的に割り当てはなし。
【99~108MHz】
地方ブロック向けのマルチメディア放送や、
デジタルコミュニティ放送に割り当てられる。
FM波のコミュニティFM放送局 や エフエム東京 が、
この帯域に進出してくる予定。
※…旧アナログテレビジョンの、
VHF-Low Band帯に於ける、
旧割り当て周波数は下記の通り。
(ch No.) … 割り当て周波数 ⇒
映像周波数 / 音声周波数 【単位】MHz
1ch … 90~96 ⇒ 91.25 / 95.75
2ch … 96~102 ⇒ 97.25 / 101.75
3ch … 102~108 ⇒ 103.25 / 107.75
(テレビの地上デジタル化完了に伴い、
旧アナログ放送のVHFのLow Band帯の使用枠再編に伴い、
新たな活用方法が見出された。)
【FMラジオのスカイツリー移転で、
一部に弱電界地域が発生】
これは首都圏域で実際にあった裏話であるが、
平成24(2012)年02月29日に東京スカイツリーが竣工し、
半年以上遅れての同年12月07日から、
東京タワーから移設放送を開始した在京のFMラジオ局であるが、
移設に伴って新たな利害関係が発生していたのも事実である。
首都圏の各AM放送局が、平成27(2015)年12月07日に
一気にFM波へと雪崩込んで行ったが、
しかしこれを迎え撃つFMラジオ局側も黙って、
静観している訳には行かず、
様々な思惑が渦巻いていた。( ̄∩ ̄#
最初に移転したのは、NHK-FMとJ-WAVEの2局で、
当初、FMラジオ局は10kWのままでの、
移転を目指していた。( ̄_ ̄ i)
しかし、東京スカイツリーのアンテナ地上高が634mと、
東京タワーの333mから、これまでの1.9倍になったため、
そうは簡単に問屋は卸さず、
透かさず他局から横槍が入り、\(*`∧´)/
7kWに減力させられたという。o(_ _*)o
(東京スカイツリーの送信空中線の見取図。
ラジオ放送用の箇所に、NHK-FMとJ-WAVEが
進出したが、高さが1.9倍になった上、
見通し距離とサービスエリアが拡大される事を恐れた、
近県エリア管轄の放送局からの干渉で、
従来の10kWから7kWに減力させられる羽目に。o(_ _*)o)
FM補完局のアンテナを設置する作業。)
つまり、移転して見通し距離が増えた分、
移転したFMラジオ局が確かに、
遠くまで聞こえるようになったのは事実だが、
一方で、出力が10kWから7kWに減力させられた上、
これまで安定して聞こえていた地域が、
一部弱電界地域となってしまうなど、
両手を挙げて喜べる状況ではなくなったと言う、
事態が発生した。ヽ(;´Д`)ノ
このため、J-WAVEは、
東京タワー南側エリアの受信環境が悪化した、。(´д`lll)
平成27(2016)年08月には、東京都港区南西部を対象とした、
みなと中継局(88.3MHz/100W)を単独局舎として、
六本木ヒルズの屋上に新たに設置せざるを得なくなったという、
皮肉な結果となってしまった。o(_ _*)o
(東京スカイツリーに送信所が移転され、
しかも送信出力が減力されたため、
旧東京タワーを送信所にしていた、
近隣の南西部が弱電界地域に陥る羽目に…。((>д<))
止むを得ず、
J-WAVEの本社がある六本木ヒルズの屋上付近に、
弱電界地域救済対策として、
屋上に設置された、J-WAVE・みなと中継局。
左側のパラボラは、神奈川県秦野市の大山向け。)
<六本木ヒルズ>
J-WAVE・みなと中継局の送信アンテナ。
八木型で3素子1段2面。)
<六本木ヒルズ>【88.3MHz/100W】
逆に、非移転組のFMラジオ局は、
思わぬ所で利益を手にする事になる。(o^-')b
エフエム東京は、平成25(2013)年02月に、
これまで東京タワーの200m付近に設置していたアンテナを、
NHKアナログテレビが使用していた、
跡地の頂上付近320mへと移転し、
出力は10kWのままで、アンテナを効率化させ、
最大実効輻射電力を40kWから125kWへと従来の3.125倍にし、
埼玉、千葉、神奈川といった、
周辺エリアでの受信状況は大きく改善した。ヾ(@°▽°@)ノ
周辺の県域局でも、
神奈川県の民間FMラジオ局・横浜エフエム放送が、
同年06月に、送信所を横浜市磯子区の円海山(153m)から、
秦野市の大山(1,252m)山頂付近に移転している。
既存の無線中継施設に間借りする形での、
設置だったにも拘らず、自然保護団体からの反対にあったり、
既存アンテナ設備への電波干渉が懸念される事から、
設置高を低く抑えたりした。
移転によって東京方面での受信状況が大きく改善された一方で、
今度は、秦野市大山から見て、
横浜市磯子区の円海山の裏側になる、
横浜市磯子区、金沢区、横須賀市が弱電界地域に陥ったため、
平成27(2015)年11月には、
横浜磯子中継局(87.0MHz/100W)が新たに設置された。
この様に、首都圏域では東京スカイツリー開所と、
基幹FM局のスカイツリー移転に伴う、送信出力の減力問題。
既存FM局の送信所移設に伴う、受信エリアの大幅改善。
旧アナログテレビジョン放送、VHF-Low Band帯の再編に伴う、
FM補完放送の実施に伴い、平成27(2015)年12月からの、
TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送のAMラジオ放送局が、
一気にFM波へと雪崩込む等、迎え撃つFMラジオ放送各局にも、
様々な思惑が渦巻いていたのである。(`∀´)
【FM補完放送によるメリット】
● 災害や放送機器の破損による緊急事態が発生し、
AMラジオによる放送が困難になった場合、
FMラジオは高台などから放送が出来る事から、
災害などの影響を受けにくく、放送が出来るメリットがある。
またFMラジオは雑音にも強く、
特に夜間帯に於いては、AM放送波特有の外国波からの
混信に左右される事なく、安定した受信状態を確保出来る。
● マンションに引っ越した所、FMラジオは聴けるのに、
AMラジオが聴けなくなったケースがよくある。
この際、FMでのワイド放送が始まれば、
これまで聴けなかったAM番組も聴くことが出来るようになる。
● ワイドFM(FM補完放送)は、ステレオ放送も予定されている。
AM番組もワイドFM(FM補完放送)ならば、
ステレオで聴けるのでより快適な音質で、