カラスとね、闘いたくは無いのよ。
別に恨みがあるわけでなし、こんな表情見たら可愛いとも思えたりするしね。
しかし、今、そのカラスとの闘いの時が再びやってこようとは。
かつての闘いはこうだった。
もう15年以上前。今のゴルフ場より標高が少し低いゴルフ場に勤めていた時のこと。
キャディをやってプレーヤーを引き連れ2番ホールに来た時のこと。
プレーヤーの一人が大きな声を出す。
「あ!カラスがタヌキを襲ってる!」
見れば20羽はあろうかという数のカラスが、打ち下ろしホールフェアウェイ左手で、ある者は飛び立ちあるものは低く地上を跳ね、真ん中にいるタヌキを襲っている。
プレーヤーの一人が言う。
「あれはきっとタヌキが子どもを守ろうとカラスと闘っているんだな!」
えええーーー!
「あの近くにタヌキの巣があるんだろうな」
「このままじゃあタヌキやられちゃうな」
ええええーーーー!
何故かわたしの後ろに隠れるようにして実況中継する殿方。
「キャディさん助けに行って来たら?」
え?えええーーー!?
長い人生、カラスと闘う時が来るとは思わなかった。
実際のカラスの群れは脅威のナニモノでもなく、頭の良いカラスの闘い方は、あるものが攻めたら他はそれを眺め、次がそれに続く。
アナグマの形勢はみるみる悪くなり、追い詰められたアナグマがカラスに牙をむく。
よし!
これ以上見逃すわけにはいかない!
カートの陰に隠れる頼りないプレーヤーに一瞥をくれるとカートに積んであるボールキャッチャーを手にする。
ボールキャッチャーで地面を叩きながらじりじりカラスとの距離を詰める。
実際は怖くてたまらないが、その気持ちを奮い起たせるようにキャッチャーをガチャンガチャンと音を立ててカラスに近づく。
だんだん近づく棒を持ったおばちゃんに恐れを為したのか、何羽かは頭上に飛び立つ。他のカラスはぴょんぴょんと飛んで、わたしとアナグマとの距離を開ける。
ガチャンガチャン。ぴょんぴょん。
ガチャンガチャンぴょんぴょん。
さ!今がチャンス!逃げるのよ!アナグマ!
何故こっちに向かってくるのっ!アナグマ!
興奮しているのか、わたしを敵認定して追いかけるアナグマ!
逃げ帰ったカートでにやにやしてるプレーヤーに文句を言い、プレーは続いたのであった。
これが初めてのカラスとの闘い。
今直面している第2段は、診察の後、記念すべきファーストオプジーボの後で書きます。
もうすぐ診察室に呼ばれるかな?