記憶旅行 05 | 風丸の駄文

風丸の駄文

いろいろと駄文を重ねてます。
共感、反論あるかと思いますが、ご容赦ください。







転機となった20代の一幕-2


福岡本社へ"研修"という名目で移動したボクが、周囲に全く知り合いのいない環境で、

同じ会社の同僚以外に話す相手もいない状況から、改めて"一からの出直し"みたいな感覚で心機一転するのは思えば2回目になる。

「どこか、ひとつの場所に腰を据える」
とか、
「なにか、ひとつの仕事に打ち込む」
といった将来展望などなく、

都会でカッコよくて、周りが羨むようなライフスタイルをぼんやりと頭に描いて、

ゼニが正義とばかりに稼ぐことばかり考えていた当時のボクはまだ実際には人並みほども稼げていないばかりか、宿無し状況だったけど、

この「営業」という仕事がボクを大きく変えるモノになるとは、その時は未だ気づいていなかった。


こういうのってだいたい随分後になって気づくもんなんだ、と今思ってるくらいだから、

人間に、予定調和なんてそうそうできるもんじゃない。


軒並み訪問、突然インターフォンを押して出たとこ勝負の営業だから、

訪問された客先はもちろんだけど、自分もその後でどんな話しをするかなど、初めは相手の反応を見ながらの対応だから、

途中で会話が途切れたり、客側に論破されたり、

端から姿さえ見せてもらえず断られたりと、見通しのつかない営業を続けていると、度々心が折れる。

営業して回るのはボク独りではなく、同僚も数人で同じエリアを回るし、

だいたいボクが入社する何年も前から会社はあるワケだから、同じエリアに何度も行っていることも当然ある。


「もうダメだ、辞めるか仕事」と

半ば投げやりになり始めると、何故かひょっこりと契約がとれたりする。

仕事がとれればとりあえず日銭は稼げるし、
うまくすれば歩合だって付く。

まさにその日暮らしの日々が続いた。


余談になるけど、福岡県ていう所は広くて、
大まかに分けると福岡市内、北九州、筑豊、久留米くらいのエリアに分類できると思っている。

これはボクでの大まかな分類。

だけに、この分類から見てもエリアごとに風土、風習、文化が同じ福岡県といっても随分と違った感じに捉えていた。

単に都会か田舎かといった見た目だけに限らず、言葉も、そして地域性からくる人柄みたいなものも違っていた。

ちょっと分かりづらい表現かも知れないけど、東京で言えば都内と都下くらいな感じ。

ゆえに北九州から福岡へ移った当初は都会さに気圧された劣等感のようなものがあった。


そんな感覚的な違いにも慣れてきた頃、
ウワサ程度に聞いてはいたが、行ったことのないエリア、筑豊地区が気になって、
班長が営業で回る場所決めに迷っていたある日、不意に筑豊へ行ってみたい旨を伝えると
班長は何も言わずに筑豊エリアへと向かってくれた。

ボクは言い出しっぺだから、これでまた仕事が取れなかった日には事務所に帰ってからのイヤミのような説教を聞くのが頭に浮かび、
いつも以上に自分に気合いを入れたのを思い出す。

実は、田舎町でガラが悪いという前評判のようなイメージがあったエリアだったから、
不良、ヤンキーブームだった当時の気持ちは、
知らない町の不良とはどんなんだろう?
という、怖いもの見たさみたいな好奇心もあったから、初上陸する筑豊へ行くのが楽しみでもあった。


都会よりは田舎のほうが訪問先での会話ができる確立は高い。
会話さえできれば結構仕事に繋がることも多いのと、
知った町より、全く知らない町のほうが先入観がなく回れる。

自分にプレッシャーを与えつつ、肯定材料を頭に刻みながら筑豊地区の田川に到着した。

不思議なもので、自分に都合のいい解釈が身体と頭に自然に染み込んだ感覚になると、
実際の目の前のあれこれが好条件に捉えられて、
「今日はイケるんじゃないか?」
って気分になる。

上陸初日から仕事は早い時間帯に取れて、
気持ちに余裕が生まれ、その日から数日間同じエリアへ向かう日が続いた。

数人で営業していたので1週間もすればいい加減仕事も取れなくなるし、施工の仕事のほうも片付く。

ということで今日を最後にしようとの班長の言葉で営業に回り始めた朝、

季節はまだちょっと寒いけど、だんだんと暖かくなり始める3月か4月くらいだったと思う。

独りでトコトコ歩いて約1キロくらい離れた隣り町を回ることにした。

そこは新興住宅街で、築浅の建て売り住宅が並ぶ一区画。

他の営業仲間から離れて独りで来た区画。
端から一軒一軒丁寧に回ってみようと営業を始めてみた。

留守が多く、ペースが早まる中、
チャイムを鳴らした後に、中から「はーい」と言う返答。

田舎とあっても昨今の訪問販売を警戒する人は増えていて、直接面と向かって会話できることは結構稀だった。

にも拘らず、返事のあとで玄関を開けて出て来てくれたその家の人は、

まだ20代の新婚の奥さんかと思うような感じの女性だった。

家が新しいのに加えて、若い女性となれば若い夫婦なのかな?と思いつつも、

親切に玄関で話しを聞いてくれようと出てくる引き戸越しの姿に感謝の気持ちを抱きながら、セールストークを頭でまとめていた。


覚えている限りのやり取りをリアルに記したいので次回に譲ります。