月・木・土に投稿予定です飛び出すハート

 

「今日からよろしくお願いします。

何も分からないので

いろいろ教えてください」

日和田が話しかけても

誰も何も答えない。

 

 

室内全体がフリーズした。

まるで時間が止まったかのように

一切の動きや音を失った状態が続き

日和田は身の置き所がない様子だった。

 

 

最初に重い沈黙を破ったのは

鰐口より一つ年下の中島だった。

 

 

 

 

 

「日和田くん。僕が教えるよ。

君の担当の顧客ファイルは

机の中とあそこの棚に置いてある」

 

日和田は嬉しそうに頷く。

 

「そしてパソコンの使い方なんだけど……」

 

鰐口がじっと注視しているので

中島も優しさを感じさせない

必要最低限のことしか言わなかった。

 

 

それでも場の緊張が少しほぐれ

しばらくは中島が日和田のお世話係となった。

中島は所長からの信頼が厚い

ベテラン職員なので鰐口も何も言わない。

 

 

 

次に話しかけやすいのが

耀だと思ったのか

日和田は耀にも

いろいろ尋ねてくるようになった。

 

 

その様子を鰐口は苦々しく見つめていた。

 

 

 

 
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だいぶ間があいてしまいましたね。

これまでの話をざっと振り返ると……。

 

 

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

耀は大学卒業後、家業を継ぐ前に

小さな会計事務所で働き始めました。

当初は人間関係も良く

温かい雰囲気の職場だったのに

皆のまとめ役だった先輩が辞め

新しい人がはいることで状況が一変しました。

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

 

 

新しく採用されることになった

日和田の情報が耳に入ると

鰐口は青くなった。

 

 

そして怒りが

だんだんとこみ上げてきたらしく

大声で息巻いた。

「あいつには絶対何も教えるな」

 

 

鰐口に歳が近い同僚、中島は

聞こえなかったふりをし

若手二人は驚いて目を見張り何か言いたげに

「いいい~」と口をゆがめた。

 

Image by Free Photos from Pixabay

 

 

日和田は噂では

税理士試験の5科目のうち

すでに3科目取得しているという。

働きながらあと2科目取れば

晴れて税理士登録できるわけだ。

 

 

鰐口は40歳という年齢で

実務経験は長いが

特に資格は持っていない。

勉強したりテストを受けたりするのが

得意ではないらしい。

 

 

「あいつには

この事務所のことは何も教えるな」

 

というのも、どんなに会計の知識が豊富で

前の職場で実務経験を積んでいても

新しい職場に変われば

パソコンの使い方や、顧客情報

どこにどういったファイルを

置いてあるかが分からなければ

仕事のしようがないからだ。

 

 

「いったいこれからどうなるのだろう。

今までは楽しい職場だったのに」

耀は先行きが不安だった。

 

 

 

はたして日和田が来た初日

事務所は異様な雰囲気に包まれた。

 

 

口下手な所長は

日和田の紹介だけすると

「じゃ、あとは任せたよ。

皆でよろしくやってくれたまえ」

と言って所長室に引っ込んでしまった。

 

 

面倒見の良い先輩がいた時は

それで良かったのだ。

何かわからないことがあれば

親切に教えてくれたし

職員の間の調整もうまくやってくれ

皆それに従った。

 

 

でも今は違う。

 

職員だけになった室内は

誰も何も喋らず

空気がぴんと張り詰めていた。

 

 

日和田は、自分があまり歓迎されてないと

すぐに察知したらしく

おどおどした表情を浮かべていた。

 

 

映画は予備知識なく見るのがいいですね。

すごいサプライズが味わえます。

 

 

古典的名作として名高い映画

『舞踏会の手帖』(1937年、仏)を

ついに見ました。

 

 

若き未亡人が初めての舞踏会で踊った

10人の男性の「その後」を訪ね歩き

それぞれの人生が描かれるという

オムニバス形式です。

 

 

彼らの運命が不思議に交錯したり

旧交を温める中で

あわよくば再びロマンスが芽生えたりする。

 

そんなエレガントな筋書きを

想像していましたが

とんでもなかった。

 

ピリリと辛い毒が仕込まれていました。

 

 

弱冠16歳で舞踏会デビューした

美貌の彼女はその後すぐに結婚しますが

男性たちに残していった爪痕は

想像以上に深かったのです。

 

 

「フランス人女性は愛に生きる」

というイメージがありますが

フランス人男性にとっても

愛は人生の中で

大きな比重を占めているのですね。

 

 

ヒッチコックのスリラー映画じゃないかと

思うようなシーンもあり

胸が痛くなるような展開が続きましたが

結末にはちょっと救われます。

 

 

少しネタバレになってしまいましたが

でもまだこの映画を観ていない人

絶対にお勧めですよ。

 

 

UnsplashAndreas Rasmussen

 

そしてガス燈(1944年、英)

 

イングリッド・バーグマン主演の映画

ということは知っていたので

ガス燈下でカップルが待ち合わせる

恋愛映画だと思っていましたが……

 

違いました。

 

 

SNSで普及した

「ガスライティング」の語源が

この映画であることを私も最近知り

当時そのテーマが

世の中に与えた影響の大きさを感じます。

 

 

後の作品で繰り返し使われたため

目新しさはないかもしれませんが

古典として重要ですね。

 

 

もう一点、思っていたのと違ったのは

ガス燈は屋外の街灯ではなく室内照明だったこと。

 

 

電気照明が普及する以前の

19世紀(1870年)のロンドンの

ノスタルジックな暮らしぶりも見所です。

 

 

 

思ってたのと違ったこと

 

 

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