ONCE MAGIMAGI -6ページ目

第三十二話 真実・ボクらの世界

そこに待ち構える人は、確かに優希の知っている人だった。

しかも懐かしい。

「ニア」

「よお」

こうして会うとなんだか、むず痒い。

いつも面を向かって話した相手ではないからか。

あの時は側に、内に彼女はいた。

しかしその顔は、たまに鏡から見えていた顔そのままだった。

「つもる話はいくらでもある。時間もある。ゆっくりと世界の真実を知れ」

「うん」

最初は世間話だった。

次はニアがいなくなった後の太陽神杯決勝。

天空船での死闘も話した。

史奈子と付き合い始めたというと、ニアは少し、ムッとした。

生徒会長占拠を、ボロボロになりながらも勝ち抜いて、生徒会長との一騎打ちにコマを進めたことも話した。

ニアは、話のほとんどを、笑って聞いてくれた。

クリスマスに、番長から、自分の持って生まれた宿命を聞かされたことも話した。

「なんで、悪魔や神がこの低次元の世界にかかわりたがるの?それがとても不思議」

校長から聞いた話だ。

高次の存在が、なぜこの世界に干渉するのか。

「そうだな、まずはそこからか」

ニアがゆっくりと世界の真実を話し始める。

その真実はとても腹立たしいものだった。

「ゲームなんだ。この世界」

最初、一言では意味が理解できなかった。

ゲームって。

あのテレビで遊んだり、簡単なカードとかで遊ぶゲームもある。

たくさんありすぎて、よく分からない。

「そうだな、ゲームといっても色々あるか」

ニアが考え込む。

「一番近いのは、オンラインゲーム…か?MMOとかいうのが多分一番近い」

オンラインゲーム。

コンピューターを介して世界中の人と一緒に遊べるゲーム。

MMOとは、広い世界がありそこに疑似の自分を作り出し遊ぶ。

いろんな人でその世界を共有するのだ。

「じゃあ、悪魔や神々って…?」

「神には二種類あることは伝えたな」

記憶をさかのぼって思い出す。

「主属神と従属神…だと思う」

「そのとおりだ」

「まず、主属神はシステム運営をする神。この世界を創ったり、いろんなサービスを提供する側の神だ」

「対して従属神はそのサービスを受ける側、ゲームで遊ぶプレイヤー達だ」

「悪魔は?」

「ルールを破った神だ。不正を働いた神を悪魔って呼んでいる」

ニアが大きく息を吸った。

「この世界は何回も何回も繰り返している。もちろん高次の存在である私たちにとって、だが」

「何千億年、何兆年も繰り返している」

「あきないの?そんなに繰り返し同じゲームやって」

「あきるさ。だから主属神はいろいろなサービスを提供する。その究極なのが『魔法』だ」

「魔法?」

「魔法導入当初は、すごくこの世界、ゲームが盛り上がった」

「それまで主属神しか触れなかった、システムに直接介入できるんだからな」

「つまり、なんでもありのゲームに、この世界はなった」

「これは例えだが、レベル1から始まるゲームにシステム介入していきなりレベル99にも出来る。いや、レベルキャップさえなくすことができる。いきなりレベル一億、なんてもの可能になったんだ」

「魔法って…そんな」

「ああ、そんなデタラメがいつまでも続くはずはない」

「次第に不正者―――悪魔だな―――が増え、従属神が減り始めた。末期だ」

「しかしそれでも主属神は諦めなかった。何とかしなければと考えた。だがな、その魔法を考え出したのは他ならぬ主属神だ。同じ神は同じ間違いをするかもしれない」

「そこで神は考えた。この世界の住人に決めさせれば良いと。自分たちの世界だ。自分たちで決めろと」

「その住人の代表がボク?」

「無責任な話だがな」

「昔に、こんなことがなかったわけでもないんだ」

「魔法ができた当初、神は、主属神は一人の人間に、魔法の存続をかけて、特殊な力を渡した」

「プロパティの書き換え、主属神の言い方だと世界律変換法、それを一人の人間に渡した」

ニアが一息ついた。

「本題を進める前に、プロパティの書き換えについて勉強だ」

「プロパティの書き換えとは超意志だ。自分の魔法を通し、他人の意志をキャンセルする」

「魔法を使うときのネックは、他人の意志だ。自分と違うことを考えている人間は必ずいる。真正面から対立することもある。対立した場合、互いが互いの魔法を邪魔しあって、世界全体に魔法を行き渡らせられない」

「他人の意志をキャンセルし、自分の魔法を世界に干渉させる。それがプロパティの書き換え、世界律変換法だ」

プロパティの書き換えの説明が終わったところで本題に戻る。

「その人間―――神に選択の権利を与えられた人間―――は、一つの条件を世界に付け加える。二人以上の意志が存在したときだけ魔法が使えるように、と」

「いわゆる、DDSフィールドだ」

「画期的とも言われたその改革だったが、それでも悪魔の増加と、従属神離れは抑えきれなかった」

「仕舞いには、SSフィールドなんていう改革を無視した裏技までできる始末だ」

「世界は狂いを止められなかった」

そこでニアは息を尽く。

「まあ、私も今回自分の次元で調べて分かったことも多かったのだがな」

優希にはつらい事実だった。

自分たちの住んでいる世界がゲームであるということ。

自分に背負わされた宿命。

確かにニアから教えられた真実は、すべてのピースがはまる、最高の答えだ。

だが、頭で理解しても、心がついていかない。

優希は混乱していた。

「時間はまだある。今年の二月二十九日が本番だ。あの天使も言っていた」

「自分で世界を切り開くんだ、って」

時間。

その言葉で一つ思い出した疑問があった。

「ニアは、どう押してこの時間に帰ってこれたの?一度ログアウトしたら一年は帰ってこれないって。この世界は繰り返さないって」

「ああ、確かにこの一年は繰り返さない。それほど重要な決断なんだ。今回の世界の革命は」

「でも穴はあるものさ。番長がこの世界にどうやってきたか、覚えてるか?」

「未来から、時間をさかのぼって……じゃあニアも?」

「触れてみろ」

ニアの体は透けていた。

存在が確定していない。

あの時の番長と同じだ。

「この世界に帰ってきてみたら、何十年、何百年も未来の世界だった。魔法が存在しない、な」

その未来は優希の知らない未来だった。

ニアにその時代のことを聞いた。

「科学が再発した。のはいいが、魔法がなくなったから従属神どころか悪魔までいなくなった。世界は荒れ果て腐ってしまった。主属神が頑張っていたが、間もなく滅びるだろうな、あの世界は」

番長の感は大当たりだった。

世界はどちらにしても滅びる。

ならば優希がする決断は。

「………悪魔共にしてみれば、魔法が消失しては困る。面白くないゲームはしたくないだろ?」

「だから優希、お前を殺しにくる。殺してしまえば世界を変えることは出来なくなる」

「だがな、私も悪魔だがな…」

「言わなくてもいいよ。ニアはボクの大事な人だ」

「私にとってもだ」

笑い合えた。

二人が離れていた時間は決して短くない。

それでも、また、笑い合えたのだ。

こんなに嬉しいことは他にはない。


「さて、プロパティの書き換えをしようと思うのだが」

「ニアが?あ、そか出来るんだったね」

「何を変えるの?」

「うん」

その、ニアの申し出は優希には少しためらわれた。

でも、あと二か月、生き残るには必要な変換だった。

だが。

「ごめんニア、一つだけ、そのプロパティを変える前に、しておきたいことがあるんだ」

「時間はあまりないそ」

「うん、でも、覚悟を決める前に、それだけがどうしても心残りで」

「ふむ、まあいいだろう。覚悟を決めるには何かしら儀式がいるものだからな」


そして優希は天空船に上った。

心残りをふっきるために、そこに史奈子を呼んでいた。

宿命が近づいてきていた。

世界の決断を迫る、宿命が。


思い出話