ONCE MAGIMAGI -19ページ目

第二十一話 勝者・太陽神の称号

結果、優希は負けた。

戦意を喪失し、ただ桜に殴られ、そして負けた。

太陽神の称号は桜のものとなった。


称号の授与式。

桜は、泣きながら称号を受け取った。

会場のほとんどが、嬉し涙と勘違いしていた。

真相を知る者は決勝で戦った二人だけだった。


「ユウちゃん」

試合もすべて終わり、人気のなくなった闘技場で優希はただ呆然とたたずんでいた。

そこへ史奈子が駆け付けた。

「やあ、ナデシコ」

優希は精一杯、普通を装った。

「ユウちゃん?」

「何?」

「ううん、なんでもない」

「うん」

「じゃあ、私帰るね。ユウちゃんも気をつけて」

「うん」

そうして、史奈子は帰って行った。


「よう、ナデシコ」

「兄さんまで」

闘技場を出た所で桜にあった。

陽気に話していたから、すぐに分かってしまった。

「何が俺まで何だ」

史奈子の言葉は的を得ていた。

「とても、とても悲しそう」

「!」

桜はハッとする。

顔に出ていたか、

態度に出ていたか、

なぜ悟られたか。

必死で考えをめぐらす。

「なんで分かった?」

「だっていつもと全然違うもの」

だからと言って、一言では普通、見抜けない。

長い付き合いのある史奈子ならではの、勘だ。

「ユウちゃんも死ななくてよかった、って伝えようとしたら、すごく落ち込んでるし…」

「そっとしてやってくれたんだな」

史奈子はうなずく。

「だって、私分からないもの。なんで悲しいのか、勝てなかったくらいで落ち込むユウちゃんじゃないし…」

そして一言感想。

「私悔しい」

「…」

「私も、ユウちゃんや兄さんと同じ立場に立ちたい!一緒に悩んであげたい!」

「ありがとうな」

桜の言葉は史奈子にはつらいものだった。

史奈子は涙を一筋ながした。

でも、分かっている。

本当に泣きたいのは、優希と桜だ。

心の中で、涙を流しているのはこの二人なのだ、と。

「兄さん、私行くね」

「ああ」

ナデシコは去った。

桜と優希だけが残された。


「よう、優希」

「やあ、桜」

二人は対面した。

桜の方から近づいた。

「怪我、大丈夫か?」

「ウェヌスさんに治してもらった。痕もないでしょ?」

「立派なもんだ」

沈黙が支配する。

何かを話さなければ、そういった焦燥感は二人の間に生まれない。

ただ沈黙が心地よかった。

「ふう」

たまに、二人のどちらかが、ため息をついたり、くしゃみをしたり。

しかし沈黙は続いた。

やがて夜の帳が下りた。

二人はまだ、そこにいた。

「あれは、なんだったんだろう」

沈黙を破ったのは、優希だった。

話したくて話したというよりは、考えが駄々もれたようだった。

「現実さ」

あれとは、ニアのことだろう。

なにとは、ニアの意味のことだろう。

同じことを考えていた桜には、容易に理解できた。

「現実か」

そしてまた優希は思考に入る、

ところで止められた。

「家族が心配する。帰ろうぜ」

「うん」

夏休みはまだ長い。

やっと半分を過ぎた所だ。

また、明日考えよう。

二人は立ち上がった。

「明日も現実か…」

「ああ」

しかし、本当の消失感は、まだ二人に訪れていなかった。

とくに、その現実が日常だった優希には。


桜は、この学校で男性としては二番目の称号、太陽神、アポロになった。

それは、力の象徴。

しかして、優希は強い力を持つが、一般生徒。


二人の道は、分たれた。


ただ、静かに