太陽電池のHIT技術についてごにゃごにゃ | 元太陽光発電技術者の道楽ブログ

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30年余り太陽光発電に携わってきましたが、リタイアすることにしました。
これまでの経験を活かし、我が家の屋根太陽光発電や購入した分譲太陽光発電所の状況・運営・評価などをはじめ、太陽光発電の技術に関連したことを中心に呟いていこうと思います。

昨日紹介したPERC技術は太陽電池の表面ロスを低減させるために、太陽電池の表面を絶縁膜で保護する方法でした。これに対してHITといわれる技術は太陽電池の中にアモルファス膜を導入するもので、PERCとは全く異なる技術です。



まずHITというのはHetero Intrinsic Thin film の略で、結晶シリコンの太陽電池の中に異質(Hetero)で中性(Intrinsic)の薄膜(Thin film)を導入します。異質(Hetero)と言っても同じシリコンですが、アモルファス(非晶質)という結晶とは異なる構造で性質も異なっています。しかし結晶と同じように半導体特性を持ちますので、発電に寄与することができます。この点でもPERCの絶縁膜とは異なります。



HITの説明にパナソニックがよく使っている図を下に示します。



上の図を見るとn型単結晶をアモルファスシリコン層で挟んでいるのが判ると思います。この層を電極との間に導入することで太陽電池の効率が改善されたわけです。この効果は偶然発見されたらしく、一応、効率改善の理論的な説明はなされていますが、本当のところどうなのかはっきりわかっていません。



で、

この図ではn型単結晶の両面にアモルファスシリコン層がありますが、当初のHITでは表側だけにしかありませんでした。このようにHITはアモルファスシリコン層の導入の仕方でいくつかのバリエーションが生まれます。これを説明した図がありましたので、下に示します。



この図で言うと、当初のHITは左下の片面ヘテロ接合になり、今のHITは上の両面ヘテロ接合になります。残る右下の図は今盛んにHITで研究されている新しい構造です。これにはHIT以外にバックコンタクトと言われる技術も併用されています。



バックコンタクトではプラス電極もマイナス電極も裏面になるので、表側には全く電極がありません。電極による影が無くなる分、少し効率が上がります。更にHITの技術を裏側の電極に使って効率向上を狙おうとしています。図にも示されていますが、いくつもの組織がこの構造の研究を進めています。驚いたことにシャープもこの研究をやっているようです。シャープが研究しているバックコンタクトヘテロ接合の図が下図です。同じですね。





さて、少し気になるのは・・・、

HITではアモルファス層は発電に寄与する層として働いています。この結果、HIT太陽電池は電圧が大きくなるという特徴がありますが、その効果はアモルファス層が光の強い表側にある時の方が強くなるのではないかと想像しています。これがバックコンタクトになってしまうと、HIT効果が出にくいのではないかと懸念しています。



一方、バックコンタクトヘテロ接合の図をみると、電極の無い表側にもアモルファス層が使われています。このアモルファス層はHITとは異なる構造ですが、HITの効果を持てるのかどうか良く判りません。



まぁ、このように良く判らないところがあるので研究が重ねられているのでしょう。どこが勝つか判りませんが、やはりパナソニックが有望なのでしょうね。シャープさんの太陽電池事業は継続のようですが、この研究も続けるのかな。








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