誰にもある

幼い頃の忘れられない思い出は


虹の雫のように

心の中の隅っこでキラキラと光る

小さな宝物

 

その一粒一粒を

思い出すたびにちょっぴり心が切なくなって

ほろりと涙がこぼれそうになる


そんな幼い女の子の愛情物語


*

*

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前回からの続きです








小さなあかちゃんのカタツムリを見つけて


とても嬉しかった女の子は



早速、そのカタツムリを


小瓶に入れて持ち帰り




おかあさんに小さくきってもらった


キュウリやにんじんを


小瓶の中に入れてあげたり




霧吹きで小瓶の中を湿らせたりしながら


あかちゃんカタツムリが


快適に過ごせるようにしてあげました




あかちゃんカタツムリが


キュウリやにんじんを食べていたり




小さい姿で


元気よくツノを出している姿を見て


女の子は楽しんでいました




その日から毎日、学校から帰ると


あかちゃんカタツムリの様子を見るのが


女の子の日課になりました




ある日、女の子は


アパートの隣に住む幼馴染みに


そのあかちゃんカタツムリを見せてあげたくて


小瓶を家から持って出ました




そして幼馴染みに見せてあげようとしたときに


手が滑ってその小瓶を地面に落として


しまいました




女の子は慌ててその小瓶を拾い上げて


中の様子を見てみると




あかちゃんカタツムリの小さくて


透き通るような綺麗な殻が


少し壊れていました




女の子はびっくりして


あかちゃんカタツムリに謝りました




謝っても殻は治りません




どうしよう、大変なことをしちゃった


と女の子は落ち込みました





幼馴染みには家に帰るね、と告げ


その小瓶を家に持って帰って


一晩そっと置いたまま




女の子はずっと


あかちゃんカタツムリに


心の中で詫びました





次の日


朝から雨が降っていました




女の子は学校から帰ると


小瓶を待って


いつもの塀のところへいきました




そして小瓶からそっと


あかちゃんカタツムリを取り出し




塀の下に生えている葉っぱのところに


あかちゃんカタツムリを戻してあげました





あかちゃんカタツムリを


連れて帰ってケガをさせてしまって


ごめんなさい





みんなと一緒に自由にのびのびと


いるほうがよかったのに


わたしのせいでごめんなさい




あかちゃんカタツムリの殻のケガが


治りますように、、、





と、言って


女の子は自分がやってしまったことを


心から反省して家に帰ったのでした





毎年、梅雨の時期になると


女の子は


小さなあかちゃんカタツムリのことを


思い出します




ちゃんと殻も治って


大きくなってくれてるといいな




女の子は、あかちゃんカタツムリと


もう少し一緒にいたかったけれど




だけど、あの時


塀のところに戻してあげて


みんなのもとに帰れたのだから


それでよかったんだ


と思いました





それ以降


あんなに小さくて


半透明の綺麗な左まきの殻を


背中に乗せているカタツムリは


一度も見かけていません





女の子にとっては


奇跡のような出逢いと




ちょっぴり胸が痛む


カタツムリとの大切な思い出です