誰にもある

幼い頃の忘れられない思い出は


虹の雫のように

心の中の隅っこでキラキラと光る

小さな宝物

 

その一粒一粒を

思い出すたびにちょっぴり心が切なくなって

ほろりと涙がこぼれそうになる


そんな幼い女の子の愛情物語


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ちょうど梅雨の季節のお話です




小学一年生になった女の子は


1人でお留守番が出来るようになりました




お母さんは土曜日も夜まで仕事で


仕事帰りに保育園に通っている弟を


迎えに行ってから帰ってきます




お父さんも仕事や出張でほとんどいません




なので、女の子は小学校から帰ったら


夜にお母さんが帰ってくるまでは


1人で過ごします




昔は土曜日もお昼まで学校がありましたが


土曜日は給食がなかったので




学校が終わって家に帰ると


お母さんが


お昼ご飯を用意してくれていました





おかかの入った


ラップ握りの大きなおむすび一個が


おかあさんの作るお昼ご飯の定番です




お母さんは左手が不自由だけど


ラップでくるめばおむすびが作れます




ご飯におかかの醤油の味がしみて


なかなか美味しい丸いおむすびでした




そして、おむすびの横には


いつもお小遣いの100円がおいてありました




学校が終わって帰ってきたら


おむすびをほおばりながら


テレビを見る土曜日の1人の時間は


女の子にとっては


ちょっぴり大人になった気分です




食べ終わったらお小遣いを持って


お菓子を買いに行ったり




近所の本屋さんに行って


漫画の本を立ち読みしたり




同じアパートの幼馴染ともよく


一緒に遊んでいました




一年生になってからは


幼稚園の頃に比べたら


寂しさはほんのちょっとだけ





「だってわたしは

小学生になったんだもの」





女の子は強くなった自分のことが


少し誇らしく思えました






そんな一年生になったばかりの


梅雨の頃のこと





雨降りの日は


女の子が楽しみにしていることがあります




学校が終わると女の子は傘をさして


急いで家に帰り




家に帰ったら急いでランドセルを置いて


蓋のついた小瓶を持って


近所の家のブロック塀のところへ行きます




雨の日のそのブロック塀には


沢山カタツムリが現れるのです




女の子の楽しみは


そのカタツムリを見ること




雨の日にたくさん現れる


背中に渦巻きの殻を背負った


カタツムリを見るのが楽しくて大好きでした




そしてその中でも1番小さなカタムツリを


見つけたら育てたいと思って


小瓶を持っていっていたのでした





つづく。。。