$雑食食堂

★★★★☆

01. ぶっかます (Prod by AKIO BEATS)
02. LIVE GOES ON (Prod by YOUNG-G)
03. ヨコハマシカ feat. OZROSAURUS (Prod by ドリームトラクターズ)
04. マイク中毒 pt.3 逆 feat. STERUSS (Prod by DJ KAZZ-K)
05. DOOR(ALI-KICK REMIX) (Prod by SPECIAL OTHERS)
06. だろう生活ながら毎日 (Prod by サイトウ"JxJX"ジュン)
07. 契り流星群 (Prod by ロベルト吉野, SHINCO)
08. ヒップホップ体操第二 (Prod by Yasterize)
09. WHO'S LEADER!? feat. JAB (Prod by MISTA SHAR)
10. YouTube見てます (Prod by ドリームトラクターズ, ロベルト吉野)
11. 特にありません (Prod by EPLP)
12. GIVE ONE'S LIFE 4... (Prod by DJ 松永)

サイプレス上野とロベルト吉野の4枚目のフルアルバム。2月20日発売。

まさか前作から1年足らずで新作が聴けるとは思ってもいなかったが、それがさらに今までの作品を凌駕する出来栄えなのにも驚いた。
正直今までの彼らの作品は、あの楽しくてたまらないライブのレパートリーが増えたなくらいの(失礼!)印象しかなかった。逆にいえばライブで聴いて初めて曲の良さがわかるようなものが多かった。

しかし本作は作品単体で完結していて、サ上とロ吉の良さを余さず凝縮した一枚といってもいい。

ももクロの掛け声をパクリながら新たな造語、「ぶっかます」をサビにしたM-1からYOUNG-Gによるアッパーなトラックとサ上のスキルフルなラップが新境地的なM-2といきなり攻める。

続く先行シングルのM-3は彼らの18番でもあるメロウなトラックに感傷的な歌詞が印象的。
シングル単体で聴いたときは少し弱いかなと思っていたが、いざアルバムに収録されると胸に響く。
そのままコラボが続くM-4、5も素晴らしい。がむしゃら感なラップスタイルが胸に響くCRIME6と地に足付いたBELAMA2のバランスが素晴らしいステルス勢に若干食われてる印象も否めないが。
M-5の風通しのよいトラックに心地よいコーラスが冴え渡る雰囲気もさすがALI-KICKと言える。
トラックごとに違ったアプローチでラップするサ上がいるからこそ、神懸かったクオリティで曲が続く。

後半のセルフパロディ的な歌詞が続く流れも聞き逃せない。
弟キャラ的な立ち位置だと勘違いされているのか、悪絡みされた受難が語られるM-10、11は思わず苦笑してしまう。

そんな流れから突然弩直球のラブソングでアルバムは締められる。歌う人が歌えば「セルアウトだ」とやり玉に挙げられそうな歌詞だが、人間味あふれる彼(と本作の流れ)だからこそ腹落ちする内容。

まさに彼らのライブを疑似体験しているような綺麗な構成の、今年ベスト級の傑作だと思う。
ツアーに向けて今から聞いても十分間に合う。ぜひ。
$雑食食堂

★★★★

01. #canuhearthestars?
02. YEAH!
03. TONITE
04. #395days
05. NO WAY
06. Das Dance (Like That)
07. Butterfly
08. #backinbusiness
09. CHANCE
10. One In A Million
11. LOVER
12. #anotherreality
13. FNKY ALGORTHM
14. #NEVEN
15. JOURNEY X
16. TRANSFORMERZ
17. #back2square1

m-floの通算7枚目のアルバム。2013年3月13日発売。

前作からエレクトロ路線を本格的に取り入れたm-flo(とは言っても前々作のリミックスアルバムもエレクトロ主体だったので以前から片鱗は見えていたが)。
現行のEDMを節操無く取り込んでいたので、楽しくは聴けたがm-floのカラー自体は薄くなっていたのは否めなかった。
しかし1年というLoves期を越えるハイペースでリリースされる本作は、多少の舵修正を試みたように感じる。具体的に言えば「m-floらしさ」と「EDM」を上手くブレンドすることを狙いにしたアルバムだ。

……とは言ってもメーテルの声で例の「DJ ☆Taku Drop it」が聞こえたかと思うと、初っ端から前作越えのDJプレイに重きを置いたSwedish House Mafia直系の歌もの×エレクトロソングで先行きが不安になるが、全体を聴き通すと上記の2つの要素が上手く棲み分けされているように感じた。

特にVERBALのラップが曲によってテーマを持たせているのでここで「m-floらしさ」がグンと戻ってきた。M-3のTONITEやM-11のLOVERは、Loves期活躍したシンガーとの曲だけあって当時の雰囲気も残しつつ今のモードにアップデートさせる二人の手腕はさすがの一言。

一方でもう一つのトピックスがTAKUがボーカルをとっているところだろうか。オートチューン全開でサビを数曲担当しているのには驚いたが(どの曲かは聴いてからのお楽しみということで)歌唱力は小室哲哉よりほんの少し上手いかな程度。同じavexなんだし今後二人のジャイアンリサイタル的なコラボをMAX松浦に実現して欲しいものだ。

前作に引き続きMINAMIとマットキャブが参加しているが、MINAMIは声にクセがない分いろんな曲調に使えて便利なのはわかるが、どの曲も没個性化しているのが気になる。もはやm-floのサブメンバー化しているが今後LISAやmelody.、YOSHIKA並の仕事をしてくれるのか疑問だ。
一方水原希子が参加したM-5は結構ハマっていた印象。

今のところセールスもライブ会場の規模も右肩下がりなのが気になるが、block.FMはじめ様々な場所で音楽の啓蒙活動をする彼らを今後とも応援したい。
$雑食食堂

★★★☆

01.BRAIN DRAIN
02.AIWAGUMA
03.PLANETARIAN
04.MAHOROBA
05.BEEHIVE
06.DANCE
07.γ
08.FINGER PRINT
09.LYNCH
10.UN&DO
11.GASSHOW
12.INEMURI
13.ESPECIALLY
14.BIRDIE
15.HIRUNO HOSHI ※bonus track

RADIMPSのフロントマン、野田洋次郎によるソロプロジェクト、illionによるデビューアルバム。2013年3月6日発売。

「日本からのトム・ヨークへの解答」というとんでもない宣伝文句で欧州に売り込まれているようだが、あくまで洋楽志向の曲は薄く、RAD同様のJ-POP的なバンドサウンドを下地に、エレクトロニカや民族音楽などをまぶしているサウンドが、アルバム全体を通して鳴っている。
海外の人には「下地」の部分が斬新に聴こえるのだろうか。良く分からない。

つまりはRADWIMPSぽさが拭えども拭えどもこびりついてしまったような作品。
そもそもRADWIMPSも野田のワンマンバンドだから個人の作家性が色濃く反映されているのは仕方ないとして、もう少し洋楽度を強めて欲しかった。

歌詞の世界観は「君と僕」に終始していたRADに比べると、SFタッチな視点で世界に溢れる暴力や死にいく命について歌ったM-3、5や、逆に「君」すら排除して内省的な言葉で「僕」のみを歌うM-7、8が新鮮に感じる。

上で挙げた「RAD」ぽさも後半につれて少しは薄まるが、突然切りこまれるM-11「GASSHOW」は日本語詞で歌われる震災への鎮魂歌はRAD印といえる曲。古語(のようなもの)を使い歌うスタイルはまんまそうだし、Amazonのレビューを見るとこの曲ばかりが絶賛されているがそれもRADのリスナーが投稿しているからだろう。個人的には痛々しくてキツい。そもそも曲名が「GASSHOW」って……。

なんだか文句を並べてしまっているが、結構楽しんで聴いている。
ポップに言葉が跳ねるM-3や7、Radiohead風の憂鬱さ全開の歌い回しのM-9、oasis風のアコースティックナンバー、M-10が気に入っている。

【補足】
ちなみに曲の構成は日本語曲が4曲(ボートラ含む)で、残りは英語となっている。RADには訳詞がなかったので本人監修のもと和訳が付いているのはありがたい。
というわけで、アルバム全体が耳に馴染んだころ訳詞を見てみると、意外にも震災・原発を彷彿させることを歌ったものが多い。
使用済み核燃料は君の足元に 念のためね(M-3 PLANETARIAN)
除染、避難、この死骸をどう片付けたらいい?(M-5 BEEHIVE)
神秘よこんにちは 不幸よこんにちは 論法よこんにちは ご機嫌いかが?/例えば原子とか プルトニウムとか サヨナラ また会おうね(M-6 DANCE)

皮肉屋の野田らしい言葉が並ぶ。

【補足2】
ナタリー - マイブラ、BLURら出演フェス「TOKYO ROCKS」中止に ナタリーリンク

以前は「開催延期」だったがついに中止のお知らせが。
このフェスはillionの日本初舞台となっていたので、illionを日本で見る機会はまだまだ先になりそうだ。
一方で3月には公式サイトのニュースを見ると、上記フェスの運営会社がプロデュースしているロンドンでのライブも開催前にトラブったよう。なんだか前途多難なデビューになっているようだ。