$雑食食堂

★★★☆

01.BRAIN DRAIN
02.AIWAGUMA
03.PLANETARIAN
04.MAHOROBA
05.BEEHIVE
06.DANCE
07.γ
08.FINGER PRINT
09.LYNCH
10.UN&DO
11.GASSHOW
12.INEMURI
13.ESPECIALLY
14.BIRDIE
15.HIRUNO HOSHI ※bonus track

RADIMPSのフロントマン、野田洋次郎によるソロプロジェクト、illionによるデビューアルバム。2013年3月6日発売。

「日本からのトム・ヨークへの解答」というとんでもない宣伝文句で欧州に売り込まれているようだが、あくまで洋楽志向の曲は薄く、RAD同様のJ-POP的なバンドサウンドを下地に、エレクトロニカや民族音楽などをまぶしているサウンドが、アルバム全体を通して鳴っている。
海外の人には「下地」の部分が斬新に聴こえるのだろうか。良く分からない。

つまりはRADWIMPSぽさが拭えども拭えどもこびりついてしまったような作品。
そもそもRADWIMPSも野田のワンマンバンドだから個人の作家性が色濃く反映されているのは仕方ないとして、もう少し洋楽度を強めて欲しかった。

歌詞の世界観は「君と僕」に終始していたRADに比べると、SFタッチな視点で世界に溢れる暴力や死にいく命について歌ったM-3、5や、逆に「君」すら排除して内省的な言葉で「僕」のみを歌うM-7、8が新鮮に感じる。

上で挙げた「RAD」ぽさも後半につれて少しは薄まるが、突然切りこまれるM-11「GASSHOW」は日本語詞で歌われる震災への鎮魂歌はRAD印といえる曲。古語(のようなもの)を使い歌うスタイルはまんまそうだし、Amazonのレビューを見るとこの曲ばかりが絶賛されているがそれもRADのリスナーが投稿しているからだろう。個人的には痛々しくてキツい。そもそも曲名が「GASSHOW」って……。

なんだか文句を並べてしまっているが、結構楽しんで聴いている。
ポップに言葉が跳ねるM-3や7、Radiohead風の憂鬱さ全開の歌い回しのM-9、oasis風のアコースティックナンバー、M-10が気に入っている。

【補足】
ちなみに曲の構成は日本語曲が4曲(ボートラ含む)で、残りは英語となっている。RADには訳詞がなかったので本人監修のもと和訳が付いているのはありがたい。
というわけで、アルバム全体が耳に馴染んだころ訳詞を見てみると、意外にも震災・原発を彷彿させることを歌ったものが多い。
使用済み核燃料は君の足元に 念のためね(M-3 PLANETARIAN)
除染、避難、この死骸をどう片付けたらいい?(M-5 BEEHIVE)
神秘よこんにちは 不幸よこんにちは 論法よこんにちは ご機嫌いかが?/例えば原子とか プルトニウムとか サヨナラ また会おうね(M-6 DANCE)

皮肉屋の野田らしい言葉が並ぶ。

【補足2】
ナタリー - マイブラ、BLURら出演フェス「TOKYO ROCKS」中止に ナタリーリンク

以前は「開催延期」だったがついに中止のお知らせが。
このフェスはillionの日本初舞台となっていたので、illionを日本で見る機会はまだまだ先になりそうだ。
一方で3月には公式サイトのニュースを見ると、上記フェスの運営会社がプロデュースしているロンドンでのライブも開催前にトラブったよう。なんだか前途多難なデビューになっているようだ。