ドナーさんが見つかった日
地固め療法を2クールほど終えた頃、発病から5か月ほどが過ぎていた。
その日、担当看護師が突然病室へ駆け込んできた。
そして満面の笑みで言った。
「よかったですね!」
「ドナーさん、見つかったみたいですよ!」
「おめでとうございます!」
突然のことで、一瞬何を言われたのかわからず、
「……あ、はい。そうなんですね」
としか返せなかった。
そして作り笑いをしながら、
「よかったです。ありがとうございます」
と答えた。
看護師は本当に嬉しそうだった。
「また同意書とか色々ありますので、よろしくお願いしますね」
「ほんまによかった!」
そう言って病室を出ていった。
その後、主治医も担当医も研修医も、顔を合わせるたびに同じことを言った。
「よかったですね」
みんな喜んでくれていた。
骨髄移植を受けられることは、それだけ大きなことだったのだろう。
しかし以前も書いたように、私は骨髄移植が怖かった。
この時もその気持ちは変わっていなかった。
もちろんドナーさんが見つかったことはありがたい。
でも同時に、
「いよいよその時が来るのか」
という思いも強かった。
移植後の生存率。
GVHD。
さまざまな合併症。
調べれば怖い話がいくらでも出てくる…
ちなみに骨髄移植は、ドナーさんが骨髄採取の準備に入る前であれば、患者側が移植を断ることもできる。
でも私は移植をやめようとは思わなかった。
ここまで治療を続けてきた以上、進むしかないと思っていたからだ。
もし結果が悪かったとしても仕方がない。
移植が決まってから、考えることがあった。
私の骨髄は、生まれてから30年間ずっと血液を作り続けてくれた。
その骨髄が、ある日突然変異を起こし、白血病になってしまった。
移植が成功すれば、私の骨髄は役目を終える。
代わりにドナーさんの造血幹細胞が私の体に根付き、新しい血液を作り始める。
今までありがとう。
もし無理をさせていたのだとしたら謝りたい。
骨髄移植にかかる費用
ここで少しだけ費用の話も書いておきたい。
意外と知られていないが、ドナーさんの骨髄採取や、その骨髄液を運ぶための費用は患者側の負担になる。
保険は効かない。
例えば、
- ドナーさんの入院費
- 骨髄採取の処置費
- 骨髄液の輸送費
- 保存管理費
などだ。
骨髄液は郵送されるわけではなく、専任の担当者が直接運ぶ。
そのため交通費なども発生する。
後日、それらの領収書のコピーが送られてきた。
ドナーさんが特定されないよう、駅名や地名などは黒塗りになっていた。
私の場合は約20万円だった。
遠方のドナーさんであれば、さらに高額になると思う。
こうして私の骨髄移植は正式に決まった。
地固め療法も、実施中だったクールを最後に終了することになった。
ずっと待っていたはずなのに、心はザワザワしていた。
希望と恐怖を抱えながら、命を懸けた治療へ向かうことになる。
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