元気ですかー。わしは可もなく不可もなくどうにか生きております。
さる思慮深い人妻の記事を読んで思い出したことがある。
近所の安居酒屋で相方みかんと飲んでいたら、みかんが突然
「ああいうやつに限って、会社じゃイエスマン。」と言う。
何のことかと思えば、隣のわしらより年のいったサラリーマンの話を聞いていたらしい。その中の一人がどうも会社の方針がいかにダメかを高らかに謳っているようだ。
みかんは若い頃は普通のサラリーマンだったのだが、いろいろあって現在はベンチャー企業で人事総務経営企画等の管理全般をしている。考え方が管理職目線、しかもベンチャーとあって優秀な人材の不足で悩んでおり、中途採用もよく行っているので、社員としての人物評価にはちょっとうるさい。
しかしみかんに言われんでも、いい年齢のおっさんらが美味くも居心地がよくもない、安いことのみが売りの居酒屋にたむろしているという時点で、少なくとも勝ち組ではないことは推察できる。負け犬が遠吠えするぐらいの自由が残されている社会は決して悪くない。
という訳で、隣のおっさんらの悪口を続けないようにみかんに語ったのが、冒頭に触れた思い出話だ。
※※※
15年ぐらい前だったか、ある師匠のところでマッサージのバイトをしていた。
ある夏の夜、仕事の後に治療院の近くの居酒屋で同僚の男の子と2人で飲んでいた。安くはないが美味い店だったので店は大概混んでいた。その日も満員で後ろのグループとは背中がほぼ触れ合う混み具合、というか後ろのおっさんがわしの背中にごんごんぶつかってくる。大きくぶつかった後には、
「すみません」と謝るのだが、謝るそばからまたぶつかってくる。
それだけでもちょっと不快ではあったのだが、もっと不快だったのがそのグループで一番偉いと思われるおっさんである。
でかい声でずっとグループの中の一人をいたぶっているのだ。ねちねち説教しているかと思えば
「喧嘩しようか!!」「なあ、喧嘩しようか」
と大声で絡む無限ループ。声がでかいので嫌でも耳に入ってしまう。
その上司とわしにぶつかってくるおっさん以外は若い男女で、なにがしかの会社の納涼会だと思われるが、要するにつまらなかったのであろう、繰り返しぶつかってくるおっさんが、ついにわしに話しかける。
「何度も(ぶつかって)すみません」
「いえいえ(そう思うならぶつかってくんなよ)」
どういう話の流れか忘れたが、わしら2人の仕事についての話になり「近くの治療院ですのでよろしく」のような営業話になり、知らんおっさんと長々話す義理はないので話を切り上げる。
ところが、おっさんはしばらくするとまたなにがしか話しかけてくる。適当に相手をしていると、3度目ぐらいに、突然わしの腕をつかんできやがった。
あまりにいきなりで、しかも商売道具の大事な腕(夏なので生腕)だったので、ついおっさんを
「なんだっつーんだよ!」
と怒鳴りつけてしまった。
静まり返る隣のグループ、しかし気づかないで説教を続けている上司。
わしに怒鳴られたおっさんは、びびったのであろう、狼狽え気味に説教に興ずる上司を指さし
「いや、あの、この人が上司で・・・」
何だその言い訳は、であるのだが、恐らくその上司が不愉快な場にしなければ、そのおっさんもわしに絡んで来たりはしなかったと思われる。わしもその上司の説教を止めさせたいと思っていたので
「お前が上司か!」
と思いっきり睨みつけた。しばらく説教を続けていた上司もわしのただならぬ気配を感じたのであろう、説教を止め、わしを見てから弱々しく目をそらし
「・・・すみません」
と謝った。
※※※
笑うみかんに、「その話には続きがある」と続けた。
※※※
暫くするとその上司はまた説教を始めやがったが、おっさんはぶつかってこなくなったので同僚と話すことに集中しながら飲んでいた。
ところが、トイレに立つ時隣のグループの若い子とすれ違うたびに、メンバーが
「先ほどはすみませんでした」
とわしに挨拶するのだ。
しかも皆、ものすごーーーくにこやかで丁寧に。
※※※
「よほど下に嫌われていたんだと思うよ、その上司」
「ふむ。」
「部下たちは上司が謝ったのが余程嬉しかったんだろうなあ、しかもオネーチャンに怒鳴られて」
結論としては、管理職が評価するまでもなく、ダメな上司は部下がきちんと知っておる、ということをみかんに伝えたのであるが、わし的な結論は別の所にある。
他人を怒鳴りつけるようなことをすると、因果はめぐって他人から怒鳴りつけられることになる。
今のわしがそれだ。去年1年で今までの一生分ぐらい罵倒された。
本日の結論:おばあちゃんの言うことは正しかった。