ニューオリンズの音楽 おすすめ10曲 | 『SunDay Jump!』~世界の音楽と文化の集い~

『SunDay Jump!』~世界の音楽と文化の集い~

~Roots Music & Culture From All Over The World~

もしオリンピック決勝の大舞台へ立つとしたら、自分ならその直前にどんな曲を聴くか考えてしまいますが、みなさまおかわりありませんか。

2/25(日)のSunDay Jump!は、ゴスペルとニューオリンズをテーマにしており、それに関連して、様々な文化が混じりあったニューオリンズの音楽について紹介させていただきます。
ジャズが生れたと言われる街、ニューオリンズの2月は、アメリカ最大のカーニバル"マルディグラ"で大騒ぎです。

なぜ、この街でジャズが生れたのでしょうか。

 

【ジャズの誕生】

15世紀頃から19世紀頃にかけて、アフリカ大陸からアメリカ大陸へ、奴隷として多くの人々が連れていかれました。
彼らは、お互いに言葉が通じないように民族を分けられ、北米では楽器や歌も禁止されたそうです。

しかし、フランス領ルイジアナの港町・ニューオリンズのコンゴ広場では、楽器(太鼓)を持ち、踊ることが許されていました。アフリカでは太鼓の音でコミュニケーションも取れるくらいですから、それがどれだけ彼らの救いになったことでしょうか。

なぜ、ニューオリンズで楽器が許されたのか不明ですが、ルイジアナが、カトリックを信仰するフランスやスペイン領だったことが影響しているのかもしれません。

プロテスタントを信仰するイギリス・アメリカと比較すると、スペイン、フランスやポルトガルなどカトリック国の奴隷制度は融和的だったらしく、中南米ではアフリカ系と、ヨーロッパ系の文化がミックスされました。

それと同様に、ニューオリンズでもフランスとアフリカ系の文化や人種がミックスされ、"クレオール"と呼ばれる混血が生れました。

フランス領ルイジアナは1803年、かの有名な皇帝ナポレオンによって、できたばかりのアメリカ合衆国に売却されますが、コンゴ広場の音楽は続いたようです。
そしてアフリカのリズムが世代を越えて伝承され、ヨーロッパからやって来た楽器や賛美歌と出会い、20世紀のジャズやゴスペルの誕生に繋がっていきます。

 

【マルディグラとパレード】

(マルディグラの様子 撮影:Whistleman)

フランスの影響は料理や行事にも残っており、カトリックの「謝肉祭」に由来するカーニバルが"マルディグラ"です。
ここで活躍するのがブラスバンドで、ニューオリンズでは葬式も"セカンドライン"と呼ばれるブラスバンドのパレードで行われます。行きは悲しい曲で送りますが、帰りは魂が解放されて天国へ行くことを祝う、明るい演奏で盛り上げるそうです。

"セカンドライン"と共に、パレードのもうひとつの目玉が、羽根がついたど派手な衣装を身に着けた"マルディグラ・インディアン"です。
奴隷としてひどい扱いを受けていた人々の中には、主人のところから逃げ出した者もおり、そんな逃亡者を助けたのが、北米の先住民であるインディアンたちでした。

白人に対抗する両者は共存していき、こちらでは音楽的にアフリカのリズムと、アメリカ先住民のチャントがミックスされていき、ニューオリンズ・ファンクにつながっていきます。

【ニューオリンズの音楽 おすすめ10曲】

前置きが長くなりましたが、アフリカ、ヨーロッパ、ネイティブアメリカンなどの文化が入り混じったニューオリンズの音楽についておすすめを、フライヤーの写真をご提供いただきましたWhistleman氏から、5曲厳選いただきました。
 

YouTubeでリストも作成いただきましたので、できたら5曲繋げて聞いてみてください。曲順も最高です!⇒https://www.youtube.com/watch?v=ikmtMxW90oQ&list=PLiIXxT6uQztuM3Xg2b0FiuZMvR88PTunf
(1曲目がライブ音源しかないけどご愛敬)


以下テキストBy Whistleman

「あと100曲くらいオススメあるのですが、断腸の思いで絞り込みました。」

 

1. Meet Me On Frenchmen Street /Shamarr Allen

ニューオリンズを訪れたらまず訪れるのはフレンチクオーター地区の「バーボンストリート」。あちこちの店から流れてくる生演奏...でもそこはあくまでも観光地。

本当にワイルドで生々しい音楽は、中心街からグッと外れて、地球の歩き方で「危険」と書かれている「フレンチメン・ストリート」に溢れてます。

ディキシーランドジャズ風味あふれるファンキーなセカンドラインで『ジャズバンドもブラスバンドもパンクバンドもいるぜ、俺がセカンドラインのやり方を教えてやるから聴きにこいよ!』と歌います。

これぞニューオリンズ!

2. Big Chief(part.1) /Professor Longhair

ニューオリンズのピアノマン、プロフェッサー・ロングヘアの代表曲のひとつ。ブルースにルンバやマンボ、カリプソ等々をぶち込んだごった煮スタイルは、今聴いても超フレッシュ。勝手に僕の人生のテーマソングにしています。ボ・ガンボスも日本語でカバーしてますね。

3. Don't You Just Know It /Huey "Piano" Lewis

ニューオリンズ音楽の「楽しさ」をギュギュっと詰め込んだ、腰にクるノベルティソング。DAKARAのCMソングにもなったので今回のなかで知名度No.1かな。うちの娘(4歳)もサビでアッアッアッア~!と歌います。

4. Sexual Healing /Hot 8 Brass Band

ニューオリンズはブラスバンド天国。毎週末、ダウンタウンをブラスバンドが練り歩きます。伝統的なスタイルからジャムバンドテイストの先鋭的なものまで色々ありますが、まず1曲ということで、このマーヴィンゲイの名曲カバーを紹介。もとは性的関係を誘うセクシャルな曲だけど、このカバーはエモーショナル過ぎてまるで人生賛歌のよう。中盤の展開がアツいので、ショートバージョンではなく8:55フルレングスバージョンでぜひ。

5. Foot Of Canal Street /John Boutte

ニューオリンズの至宝の声、ジョン・ブッテによる、新たなるニューオリンズ・クラシック。サム・クックとビリー・ホリディをあわせたような、憂いと力強さを併せ持ったその声が、心のやわらかい部分にジワジワ染みこんでいくよう。人生の辛酸と喜びを一口ずつ噛みしめるようなイントロから前半部分の力強さ。そして、曇った空がパーッと晴れ渡るようなサビ以降のハッピーな展開。何度聴いてもグッときます。


そして、IBによるセレクションを5曲掲載します。
「Whistleman先輩が断腸の思いで選べなかったであろう、ポピュラー曲を選ばせていただきました。」

6. Dr.John / IKO IKO

マルディグラ・インディアン達の歴史やチャントを元にして作られた「ジョコモ」という曲は、しばしば「アイコ・アイコ」というタイトルでカバーされています。動画内Dr. Johnの羽根飾りはマルディグラ・インディアンの伝統です。

7. Louis Armstrong / 聖者の行進

日本でもおなじみ、もともとはアフリカ系アメリカ人の民謡・黒人霊歌です。こどもの頃から知っていた曲ですが、ルイ・アームストロングの演奏を聴いて、イメージが全く変わりました。ちなみに、ニューオーリンズの空港名はルイ・アームストロング国際空港。それだけでグッときます。

 

8. Dirty Dozen Brass Band / Just A Closer Walk With Thee

ニューオリンズの葬式でよく演奏されるゴスペルの伝統曲で、大御所ブラスバンドの演奏です。おおらかで優しいメロディーをゆったり演奏する前半から、激しく展開する後半がたまりません、魂の解放。


9. Allen Toussaint / Yes we can can


2005年のハリケーン・カトリーナによりニューオーリンズは壊滅的な被害を受けました。復興支援の為に編集されたアルバム「Our New Orleans」の1曲目の収録されていて、心をつかまれました。

10. Down / Stone the Crow

ヘヴィメタルバンド、パンテラのボーカル・フィリップ・アンセルモはニューオーリンズ出身。現在はDOWNというバンドをやっており、1stアルバムのタイトルは、ずばり「NOLA」(New Orleans Louisi Ana)高校生の頃に聴いたアルバムですが、当時は「ノラ」って何だと思っていました。



<Whistleman氏からのおまけ>
おすすめアルバム5枚も選んでくださいました!!

「どのガイド本にも載っているような有名盤は外してみました。」

・オムニバス /Rounder Heritage: Mardi Gras in New Orleans


ニューオリンズ音楽のオムニバスは、お土産用のゆるいものから超ディープなものまで有象無象...だけど、これは最上級。超パーカッシブなマルディグラ・インディアンの楽曲、早弾きアコーディオンがフガフガ楽しいザディコ、これぞニューオリンズ!な活きのいいストリート・ブラスバンドまで。ド有名曲は少なめだけど、僕にとっての「ニューオリンズ音楽の最高の瞬間」がギュギュッ!と詰まってる。寄せ集めではなく新録&レアバージョンなところもいいのです。

・John Boutte /Good Neighbor


僕の「人生の10枚」に必ず入る、大好きな一枚。Sam Cookeをしゃがれ声にしたようなその声を聴くだけで天国にいるみたいな気分。ジョンよりいい声の歌い手なんているか?いやいない!!!!(私感です)ニューオリンズ音楽界隈には素晴らしい、素晴らしすぎるベテランアーティストが沢山いるけれど、現在でも現役バリバリなアーティストのなかではこの人が最高と思う。ここ10年くらい、生でライブを観たい人ナンバーワン。あぁ、ニューオリンズ行きたい...住みたい...

・Donald Harrison Jr. with D.John /Indian Blues


モダンなジャズと、マルディグラ・インディアンのパーカッシブなサウンドを見事に融合した一枚。血が沸き立つくらいに熱狂的なのに、余裕しゃくしゃくなのがニクい。渋い。たまらない。最近のニューオリンズ音楽にはジャムバンドやヒップホップ~R&Bのテイストを含めて昇華した良い音源も多いけれど、「ジャズ」を柱に据えて、そこからブレずにどっしりとファンクしているのがまたいい。ドナルドは著名なジャズマンであると同時にマルディグラ・インディアンの酋長でもあり、数枚こういう志向のアルバムを出してます。同時期のライブ盤は鼻血吹き出しそうになるくらいHOT。

・Charmaine Neville Band /Queen Of The Mardi Gras


ニューオリンズの出世頭「ネヴィル・ブラザーズ」のメンバー、チャールズ・ネヴィルの娘さんのソロアルバム。世界3大カーニヴァル(乱痴気騒ぎ)の「マルディグラ」をテーマに、自作曲とニューオリンズの超定番曲を織り交ぜつつ、斬新かつあか抜けたアレンジで演奏。ニューオリンズ特有のドロドロしたエグ味をうまく消して、旨味はそのままにモダンに洗練、結果、全編夢見心地でユルユルと腰を触れる「エエ湯加減」な極上盤になっている。DJでかけると必ずブースに「わー、これ誰?誰?」と人が集まるんだよな。

・Jon Cleary /Occapella!


この人も現役バリバリで、最新作ではグラミー獲ってます。でも日本では無名ですよね。もったいない。このアルバムは、作曲家・アレンジャーとしてニューオリンズ音楽を支えてきたキーパーソン「アラン・トゥーサン」のカバー集。
トゥーサンの楽曲は人懐っこい。誰が歌っても「おれさー、音楽すんげー好きなんだよね~」、「誰かを好きになるって、ほんといいモンだよね~」、「さぁ、おれたち今こそ立ち上がる時だぜ!な?な!!!」みたいな、人をねじふせようという気分にならない、一緒に肩組んで笑いあいたくなる曲ばっかりなんだけど、そんな曲たちを確かな腕前でまるで自分の楽曲のように多彩なアレンジで奏でていて、それは悪いわけがない。ラヴァーズ・ロックなアレンジの9曲目なんて、ほろ苦くて心がホロホロと蕩けていきそう... 彼は腕利きのマルチプレイヤーで、このアルバムはゲストボーカル以外をすべて自身で演奏しているけれど、彼のバンドもファンクしてて、とてもいい。気に入ったら、最新作「GO GO JUICE」のバンドグルーヴもぜひ聴いて!


「5枚では入りきらなかった、同じくらいに愛しているアルバム。」
・Kermit Ruffins & Irvin Mayfield /A Beautiful World
・Shamarr Allen /Meet Me On Frenchmen Street
・Rebirth Brass Band / Ultimate Rebirth Brass Band
・The Hot 8 Brass Band /Sexual Healing (Single)
・サウンドトラック /Treme 
・Davell Crawford /My Gift To You
・Eddie Bo /In The Pocket With Eddie Bo
・The New Orleans Swamp Donkeys Traditional Jass Band /Slightly Concussed II(Live at de Melkbus)


「定番アルバムのなかで、お気に入りはこちら。」
・Allen Toussaint /Life, Love and Faith
・Dr.John /Gumbo
・Professor Longhair /New Orleans Piano
・Dirty Dozen Brass Band /Mardi Gras in Montreux
・The Meters /The Meters
・Neville Brothers /Yellow Moon

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【参考にさせていただいたサイト】
ニューオリンズ用語辞典
http://www.link-usa.jp/us-dictionaly/archives/la/neworleans

ジャズのルーツ
http://yiaowang.web.fc2.com/hobby/jazz/history_0101.html

ケイジャン(Cajun)とかクレオール(Creole)って、何だろう?
http://www.asahi.com/food/cooking/TKY200706220233.html

 

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ではSunDay Jump!でお待ちしております。

2018/2/25(日) SunDay Jump!  the 14th
【会場】カフェ食堂BON BON(長岡市東坂之上町2-4-4 NNビル 2F)※会場内禁煙
【入場】1000円(1ドリンク付き)/こども入場無料(ドリンク代500円はいただきたいです)
※投げ銭にご協力をお願いします。

15:00~ 大塚雄一郎① (中東・北アフリカのロックやジャズ)
15:20~ dime (砂漠の音楽やペルーのチーチャなど)
16:00~ ヒロブギー① (ジャズやレアグルーヴ)
16:20~ 【1st Live】Joyful Spring Gospel Choir
16:50~ IB (北アメリカのケルト音楽~ニューオリンズの音楽)
17:30~ 【2nd Live】Joyful Spring Gospel Choir
18:10~ イリエカズヲ (エスニシティとジャズ)
18:50~ 大塚雄一郎②
19:10~ ヒロブギー②
19:30頃 終了