シャムは、自分が甘えたくても他の二匹に
譲ってしまう猫だった。
だから、わたしはシャムに「甘えていいんだよ」と
ずっと言い続けてきた。
その甲斐あって徐々に甘えるようになってきたシャム。
最初は、ベッドの中だけだった。
ベッドでも最初は控え目だったが、
ボス猫引退後はけっこう甘えるようになった。
そして、ベッドでは一番に扱われることを
求めるようになった。
ベッドでは黒猫クロも甘えたがり、
いつも二匹が競争状態になる。
シャムが最初に甘えているときは問題が少ない。
シャムはクロが後から割り込んできても許す。
ところが、クロが先に甘えていると、
シャムは決してフトンの中に入ってこようとしない。
わたしの顔に強力スリスリをしてくる。
これは、わたしにお願いをする時の行動だ。
この場合、「自分を第一に扱え」という感じの
要求になるみたいだ。
放っておくと、枕元に座ってじっとわたしの
顔を見ている。
クロを追い出すのもかわいそうなので、
わたしは寝返りを打って、
顔を反対側に向ける。
そうすると、シャムはフトンに入ってきて、
わたしの腕の中にすっぽり収まって
ゴロゴロと甘える。
その後すぐクロがシャムとわたしの間に
割り込んでくるのだが、
それに怒ったりはしない。
シャムが求めるのは、わたしに常に密着して
甘えることではなく、第一に甘える存在として
扱われることなのだ。
まるで自分が第一の存在と認められる限り、
浮気を許してくれる寛大な正妻のようである。
この「正妻のプライド」は、
シャムがベッド以外でも甘えるようになると
あまり強く主張しなくなった。
「ベッドでしか甘えないから、
ベッドでは第一に扱ってほしい」
と思っていたのが、
「ベッド以外でも甘えるようになったから
ベッドで一番じゃなくても仕方ない」
と思うようになったかのようである。
このあたりのバランス感覚も
面白かったのだが、
最近、また「正妻のプライド」が復活している。
認知症で記憶が退行してしまったのだろうか。
結果としてベッドでクロとの争いが激しくなり、
ますますわたしはゆっくり眠れなくなった。