男子バレー ありそでなさそな話


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空白


「そういえば部屋に戻るとき、越川さんに会ったあったよ。
 すごいね、本当に同じホテルに泊まってるんだね、ドキドキ♪」


あれ?

私が部屋に戻る時にはまだ越川はロビーにいたから、5分ぐらい前までロビーにいた・は・ず・だ・よ?


「それってどれぐらい前?」
「うーん、30分は経ってたと思うけど」


30-5=15

25分もロビーにいたってこと?
長くない?
何してたんだろ?


「なんか外の方見てたけど」


外の方…

玄関の外…



ハッ!まさかっ(!_!)
私と富松が二人きりでいたところをずっと見てたんじゃ……

いや、別に私はやましい気持ちなんて一切ないんデスケドネ。
むしろあっち(富松)が近付いてきたんデスカラネ。
てゆーか、越川に見られちゃマズイことなんて一切ないデスカラネ。



あっ、むしろドS越川だから、私をイジるネタを見つけてずっとニヤニヤして見てただけなんじゃ……(-_-)

むーーん…厄介なことになりそうだな…



その日は旅行独特の疲れと北海道の快適な涼しさですぐに眠りに落ちるはずが、一日の最後で悩みができてしまい、なかなか寝付けなかった。


むーーん……

小嘘

部屋に戻ると既に鍵が開いていた。
扉を開けて部屋に入ると、かよがツインベッドの片方で横になりながらテレビを見ていた。

もういたんだ、と確認するとかよは私の気配に気が付き、口を開いた。


「おーそーいー!!
 どこ行ってたのー!!
 なかなか来ないんだからー(>_<)」
「ごめんごめん。
 ちょっとホテルの外にね。
さすが北海道、星がキレイだったよ。」


そう言って自分のお風呂用品を片付けはじめると、佳代がボソッと私に尋ねた。



「一人で?」



   ドキッ



なんとなく富松といたことは言いたくなくて、
しかも二人きりだった、
帰り際に手首を捕まれた、
なんて包み隠さずに話してしまうと佳代のことだから大袈裟に騒ぐことは経験上明らかだ。



「う、うん、一人だったよ」



へー、ふーん、とどこか腑に落ちない返事をする佳代。
こういう時の勘は昔から鋭い。


よくすっぴんで外に出れるよねーと皮肉混じりで発言するもんだから、私だれかさんみたいにケバくないですから、と皮肉で返す。
だれかってだれよー、明言は避けるわ、なによもーー(´Д`)とくだらないやり取りがその後続いた。


手首

「おーーい、お前ら何してんだーー?」

またしてもロビーの方から声がした。
聞き覚えのある声だなと思い振り返ると、
浴衣姿の越川だった。

あいつでも浴衣姿は画になるんだと遠巻きに見ていると、「湯冷めするから中に入った方がいいぞーー」って、母親みたいな世話焼きなんだからなぁ。



「じゃあ、そろそろ行こうかな」

そう言って立ち上がろうとした瞬間、



グッ



突然。

手首。



痛っ



ツカマレタ。



私の立ち上がる速さが速かったせいか、富松の手が食い込み、手首に赤い跡がついた。


「あ、ごめん…」

バツの悪そうな顔で謝る富松。

「ううん、全然大丈夫。ていうか、どしたんですか?」

「あ、いや…」

今度は歯切れの悪い富松。

???

私としてはそう怪訝な顔はしてはいないのに、富松は少し”やっちまった”的な感じで気まずそうな表情に。



「や、特に、意味は、ないんだけど…」

座りながら下を向いてしまった富松。

???

「じゃあまた」と言って立ち上がり、先にそそくさとロビーに戻っていってしまった。




置いてかれた、私、ポカン。



何だったんだろ?

意外に気まぐれ?



手首に残った赤い跡と立ち去った富松の後ろ姿を見ながらしばらく考え、部屋に戻ることにした。

無言

ただただ星は瞬き、
ただただ星を眺める。


会話もなく、視線をあわせることもなく、
無言の時間が過ぎていく。

それでも気まずさを感じることは不思議とない。



沈黙は数分の間続き、
それを破った。

「なんか、ここ、空との距離が近い気がしません?」

意外にも富松はすぐに反応し、こちらを向いた。

「あ…」

???

「やっぱり?」

???
訳が分からず眉間にしわをよせていると、



「俺もおんなじこと思ってました」



不意打ちのおどけた笑顔。

細い目が更に細くなり、
薄い唇が一気に横に広がる。
練習で見た真剣な表情とは正反対の、温かい表情。



   ドキッ



自分に正直な人なんだな、とこっちまで微笑んでしまった。



   ドキドキッ



ゆったりとした時間の流れとひんやりとした空気が肌に触れて心地良い。


会話


「綺麗ですよね、ここの星」



星かーい!
動揺して損したわー!!



「ええ、東京じゃこんなの見れないですよー」
「そうですよね、ここの星空は格別なんです。
全日本に選ばれないとこれを見れないから毎年見れるように頑張ってるんです。」

そんな不純な動機で…とクスっと笑ってしまう。
それを見て富松は恥ずかしそうに目線を泳がせ頭をポリポリとかく。



「富松さんはこうしてよく見るんですか?」
「いつもは部屋から見てますね。
今日は先にいらしたので便乗しちゃいました。」


夜空を見上げる富松の笑顔は、夕方一緒に撮った写真の笑顔よりも自然で、
それにとても魅力的だった。



「お名前…」
「はい?」
「すみません、お名前もう一度伺っていいですか」

ああ、なんだそんなことか。
それならそんなに気まずそうにしなくていいのに。

「木村です、木村やよい」
「木村さんですね。木村さん…」
「越川なんかは”木村”って呼び捨てですよ。
だからこっちも(越川って呼び捨てに)。」
「お互い?」
「そう、お互い。
社会人になってから人に対して変に気を遣うようになって、こういう存在は貴重なんですよね」
「へー、そんなんですか…」


最後の一言は含みを持たせた話し方だと軽く感じ取ったが、気にすることはないと流しておいた。


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