男子バレー ありそでなさそな話 -3ページ目

記憶


「こちら、村木佳代さん。会社の同僚デス。」

「どぉ~もぉ~  村木佳代ですぅ~ よろしくお願いしますぅ~(^^)」


さすが、肉食女子。
最初は草食の皮をかぶってる。

どーもどーもと二人が軽く会釈すると、そっちも、と越川に目線で送る。


「あ、俺は越川っていいます。
今はイタリアでプレーしてます。」

「富松といいます。
僕は日本でプレーしてます。」




トミマツ・・・どっかで聞いたことあるような名前・・・



「富松さん、下の名前は?」

「タカアキです」



トミマツタカアキ・・・聞いたことあるようなないような・・・

う~ん、と悩んでいると越川が助け舟を出してくれた。


「東北の富松だよ」


ちらっと放ったその一言が私の記憶を呼び覚ました。

ああ!あの富松!!
最強東北の富松!!
三上・富松の富松!!



「わー本物!!握手してくださいっっ!!」

あの富松がこんなに立派になって目の前に・・・
と感傷を踏みしめながら握手する私とは対照的に
いきなりの私の豹変ぶりに戸惑う冨松だったが、
握手ぐらいは慣れているようですんなりと握手してくれた。


こんなのが知り合いでごめんな、と目線で謝る越川がいた。


メモ



「てかお前久しぶりに会って
 なんだよあの脅迫状は」

「あ、シツレイ。
 オヒサシブリデス。オゲンキデスカ。」

「今更遅ぇよ!」


へへ、この突っ込む感じ、変わってないな、と少しうれしくなった。


今は練習が終わって選手のファンサービスタイム。
いわゆる”出待ちタイム”。
今日は40~50人ぐらいだろうか。結構たくさん見学に来ている。
私たちは越川が出てきてすぐに1枚のメモを渡し、驚く隙も与えずにそそくさと立ち去った。
というか練習中に何度も目が合っていたので私の存在には気が付いていたはずだ。



メモにはこう書いた。

  『ファンサービス終わったら
84年生まれの人を一人連れて
ホテルのロビーに来い
さもなくば幼少期の恥ずかしい過去を・・・』



ということで、命令(?)通りに越川は動いて、同じ84年生まれの富松を連れてきたというわけだ。




横を見ると佳代があの希望の眼差しで私を見てきた。


紹介して

紹介して


紹介しろよ



目の前にいるこの二匹の獲物をさっさと紹介しろよ



と、目のキラキラがギラギラになりそうになる前に紹介した。


作戦



そんな芦別へ私たちは東京からはるばるやってきた。

もちろん旅行を兼ねて。



私たちというのは私、木村 やよい。
ともう一人は、私の会社の同僚であり友人である 村木 佳代(むらき かよ)。

木村と村木。
苗字が逆っていうのが仲良くなったキッカケ。
ごめんね、小学生みたいな理由で。



佳代は将来有望ないわゆる3高の男性に弱い。

【3高とは】 
 1.身長が高い
 2.年収が高い
 3.学歴が高い


知り合いがバレーボールやってるんだ(スポーツマンアピール)、と言ったら食いつき、
一応日本代表に選ばれてるんだ(実力アピール)、と言ったら更に食いつき、
身長は190cmはあるかな(高身長アピール)、と言ったら佳代は完全に網にかかった。

「何それ!?イケメン!!??」

あ、イケメンにも弱かった。

「写メあるよ、ちょっと待って」

興奮気味の佳代は前のめりになって私の操作中の携帯画面をのぞきこみ、
どれ?・・これ?・・どれよ!?と気持ちだけが先走って私と携帯画面を交互に見る。

これこれ、と私が画面を見せると
私から携帯を奪い取り5秒ぐらい画面とにらめっこ。

そして未来の希望に満ちたキラキラした目で私に言うのであった。


「やよい、即紹介して(☆_☆)」





ふ、策略通り・・・

こうなる展開は予想済みだったので
さらにこのイケメンに会えること前提の北海道旅行の話を持ち掛け、作戦通り佳代は二つ返事でOKした。


合宿


毎年恒例
全日本男子
北海道合宿


・・・いわゆる地獄の芦別合宿。

夏の北海道は快適だよ、旅行シーズンなのになぜ地獄かって?

そうだな、旅行なら天国だな。

旅行じゃねーもん、俺らにとっては仕事。
日の丸背負ってる仕事。

練習はオフシーズン中だから
余裕ない程フィジカル面で追い込まれるし。

しかもホテルと体育館が独立してあって
市街地に行くには車必要なわけ。
車ない、時間ない、余裕ない。
そんな俺らにとってはストレス発散する場がないまま何日も過ごさないといけないわけ。

これが予想以上に精神的にキちゃうわけよ。

ま、星がきれいなのと温泉に毎日入れるのは唯一の救いだけどな。



越川でした。


84

「84ねんぐみっ!



 こっちだよっっ!!」









来た来た。
やっと来た。



あいつが私のリクエストに応えて
あの人を連れてきてくれた。




嫌嫌な空気全面に出してる目のデカい人:1名。

何が何だかわかってない目の細い人:1名。

隣で『本当だったんだ』と驚いてる人:1名。




「も~~~、遅いよ~~~~~ヽ(`Д´)ノ」



「しょーがねーじゃん、

 こっちだってファンがいるっつーの!

 無視したら何言われるか分かんないっつーの!」



「“何書かれるか”じゃなくて?」



「ま、そうとも言うけど。」

「ネットは怖いね~女はもっと怖いけどね~
女がネットしてるなんて最強(最恐)だね~
 愛想ふりまくのも仕事のうちだからね~(´Д`)」

「うっせ!」



二人だけの会話が続く中、
残された二人は『この二人は一体どういう関係なんだ?』と
ハテナマークが頭の上に並んでいた。