今日、見て考えたのは、地理的関係から、過去長きにわたり琉球王国や薩摩藩による支配・日本への編入・一時的なアメリカ支配など、多様な歴史を持つ奄美大島の文化活動である。
奄美大島は、鹿児島から南へおよそ380キロメートルに位置し、全国の離島の中でも沖縄本島、佐渡島に次ぎ3番目に大きな島であり、
人口は島全体で約7万人のうち、4万人が奄美市に集中している。
奄美市は、島全体の約4割を占め、中核都市としての機能を持つ名瀬地区、緑豊かな森林と清流を持つ住用地区、広い農地と美しい海岸線を持つ笠利地区で構成されている。
日本で2番目に大きいマングローブの原生林・国の特別天然記念物アマミノクロウサギ等が生息する金作原原生林・奄美十景として大浜海浜公園・あやまる岬など多くの自然と景勝地を有している。
伝統芸能文化の、島唄や八月踊・中世時代に都で装飾品として使用されたヤコウガイを用いるらでん細工や貝さじなどの製作遺跡等、歴史空間が今も随所に見られる。
本市の持つ豊かな自然環境と伝統文化を大切にしたまちづくりに取り組んでいる。
奄美市の文化振興計画として、島民の取組意欲の醸成・文化技術レベルの向上・リーダーの育成・一流芸術家とのネットワークの構築・地域の文化・自然等を素材とする新たな文化芸術の創造等がある。
1) 青少年文化活動及び島唄等の伝承文化の伝承活動育成
小中学校における文化芸術体験活動・優れた芸術文化の鑑賞と体験・本物の舞台芸術体験事業の開催・伝統文化子ども教室等の、実施・推進・支援
伝承文化の保存と継承・発展・伝統文化の保存及び活用
各種芸術文化団体との連携による芸術文化振興に向けた気運づくり
2)音楽・演劇・美術等の自主文化事業の推進
幅広いジャンルの自主文化事業の実施・奄美市誕生記念「市民合唱祭」の開催
国・県や各種団体等の助成事業の導入・文化庁や県文化振興財団の助成事業・民間メセナ事業の導入
4) 作家島尾敏雄・画家田中一村顕彰事業の支援
島尾顕彰会活動の推進・島尾顕彰会及び研究機関研究者との情報交換の推進・島尾敏雄関係資料のホームページを活用した情報発信・奄美群島広域事務組合との連携
「奄美パーク」「田中一村記念美術館」との連携・関係情報の収集整理と発信
5)交流事業の推進と民間芸術文化交流事業の推進
大島地区広域文化祭への参加
等を推進し、住民参加型のソフト事業としておこなっている。
事業に大きな飛躍をもたらしているのは、新たな取組みである2007年5月1日、奄美の島民で作るラジオというコンセプトのNPO法人ディ!が運営し開局したあまみエフエム「ディ!ウェイヴ」である。島口・
島の音楽・島のニュース・島の人・島の情報を発信する、
島人のための「島ラジオ」である。
奄美大島の伝統文化・芸能・特産品などの情報を様々な切り口から紹介することにより、老若男女問わず島民の郷土愛・町おこしの精神を育む拠点として貢献している。
島尾敏雄の作品を朗読・各地域、集落のPRや行事の案内・各島の昔話や民話等の紹介・シマグチ(島方言)の表現と英語の表現を一緒に覚えるコーナー等、島民のみならず観光客・本土からの移住者にとっても新鮮であり、また奄美大島を様々な角度から知ることができる。
また、国内外で活躍している島出身のミュージシャン、中孝介(敬称略)は
現在も島に在住し、音楽活動を続けている。奄美大島シマ興しプロジェクト「島ぬ宝」は、彼を通して島にある特産物を紹介していくもので、あまみ黒糖生キャラメル・泥染めエコバッグを東京・銀座で販売している。
著名人が郷土の経済振興の活性化に貢献することはこれからの地方経済発展の在り方を考えるにあたり、よき見本であるといえる。
県立の奄美パークは同敷地に田中一村記念美術館や展望台・奄美の郷・ライブステージ・イベント広場など、様々なイベントが実施可能な複合施設である。奄美の郷では、島の実物大模型や写真、映像等で、奄美を見・知って体感でき、観光客はもとより島民・次代を担う子どもたちに、奄美の歴史を包括した独自の風習や民俗、文化を分かりやすく理解できる趣旨で構成されている。
施設内に点在するボードをまわりクイズに答える催し・親子3世代交流シマ唄イベント・演奏・伝統工芸品展示やワークショップ・子ども達のダンス大会・写真展示を通したシンポジウム・講師を招いたクロッキー講座・大島紬のドレス展等、様々な年齢の人達が交流し、伝統芸能に触れ、参加できるイベントを多数行っている。
また、地域住民がボランティアとしてそれぞれが得意な分野で、展示案内ガイド・手熟ガイド(島唄・機織り・三味線披露)・園芸サポーター・村サポーターに分かれ植栽・清掃まで行い、施設を盛り上げている。
地域経済を活性化するような文化活動とは、地域の地理的・歴史的特色を活かし独自の個性を醸成するために、まずは地域の住民が今一度自らのふるさとの文化を知る客観的な視点が重要である。都会を目標とするのではなく、自分達の個性を大事にし、持ち味を活かすこと。そして何よりも楽しんで積極的に参加する事、参加出来る様なイベントを実施することである。
マルチメディア活用による文化情報発信を積極的に行い、日本のみならず世界中でただひとつの文化事業を目指すべきである。