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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

悪夢のサイクル―ネオリベラリズム循環
文藝春秋
内橋 克人(著)
発売日:2006-10
おすすめ度:4.5



新自由主義者たちに言われるままに市場経済に任せている限り、今、資本の流入で一時的に景気が上がっていたとしても、その流出とともに必ず景気も落ちてゆく。バブルと同じで、規制が少ないほど上がり方が大きくなり、上がり方が大きいほど落ち方も大きくなる。そして落ちてゆくときには、それが実体経済と人々の生活に大きな被害を与えてしまいます。

日本も放置すればそうなるだろうと予測されるわけです。

新自由主義批判という立場から書かれた内容。新自由主義がいかにして生まれ世界へと広がっていき、どんな影響を与えたきたかということが書かれている。専門的な理論よりも、固有名詞を並べて、それらの個人や国家の思惑というストーリーで説明されているので、とても分かりやすい内容になっている.。

ちなみにタイトルにある「悪夢のサイクル」は「ネオリベラリズム循環」として紹介されていて、図になっているのを無理やり言葉に置き換えると以下のような流れ。

第一段階(不景気)
資本の自由化、規制緩和、市場の整備

→海外マネーの流入

第二段階(好景気)
バブルの発生、借金経営の常態化、国・地方自治体も国債・地方債を乱発

→海外マネーの流出

第三段階(不景気)
労働規制緩和による非正社員化、フラット税制による所得の二極分化、企業淘汰・合併・外資化

→海外マネーの流入

第四段階(好景気)
バブルの発生、超金持ちの出現、失業率は下がらない、経済事件の頻発

→海外マネーの流出

第5段階(不景気)
地域荒廃、共同体の破壊、治安の悪化
格差社会―何が問題なのか (岩波新書)
岩波書店
橘木 俊詔(著)
発売日:2006-09



タイトル通り、格差社会の問題点を難しいイ専門用語を使わずに丁寧に検証してある。様々なデータを駆使して、いかに日本が税制面で弱者に厳しく強者有利になっているかを指摘して、これらが格差社会の原因となっており、これらを是正して北欧・ヨーロッパ型の福祉国家を目指すべきだと主張している。その方向性の是非は別だとしても、格差社会を考える上での基礎知識を得るためには最適な入門書だと思う。

日本の税の負担率は国際的に見ても最低レベルにあります。同様に、社会保障給付の面で見ても、やはり先進国の中では最低のレベルとなっています。
(中略)
日本社会では、一般的に、次のような認識が広く存在しています。日本は税金が高く、社会保険料も高い。にもかかわらず、国民への社会保障の還元は非常に少ないという認識です。いまも見たように、社会保障の還元が最低レベルであることは、統計と合致しています。しかし先述したように、税と社会保障の負担率は、実際には、国際的に見ても低いのです。

先述したように、国際的に見ても、日本は現在、すでに「小さい政府」を実現させています。社会保障制度、あるいはセーフティネットについては、北欧諸国などとは比較にならず、ヨーロッパ諸国と比べても、非福祉国家の典型としてそのレベルは劣っています。にもかかわらず、今後もますます「小さい政府」を目指し、社会保障制度の規模を縮小する政策を採り続けようとしているのです。
(中略)
格差をめぐって議論が起きると、格差拡大を是認する人々は、おおよそ次のような主張をします。貧富の格差が広がっても、しっかりとしたセーフティーネットを確立させて、敗者、貧困者を救えばよい。したがって、セーフティーネットの確保というものがある限りにおいては、ある程度貧富の格差が大きくなってもかまわないという主張です。しかし、実際には、そうした主張とは、まったく逆の状況が進行しているのです。
総下流時代  All the Lower People
光文社
藤井 厳喜(著)
発売日:2007-01-24

引き続きグローバル経済についてお勉強。客観的に判断するほど知識はないのだが、全体的に危機感を煽っているトーンで書かれているような印象。全10章あるが、興味のある第5章「グローバル階級社会の成立」を重点的に読んだ。

財政赤字が拡大し、雇用が不安定化するのは、発展途上国の経済発展と雇用拡大の結果なのである。だから、先進国の若年労働者は、発展途上国の同じような労働者をやや上回る能力や学歴だけでは、パートか派遣の仕事ぐらいしかならなくなってしまうのである。
グローバル化というのは、世界が「単一市場」に向かう流れだから、労働者の質も均一化に向かう。すなわち、「先進国における労働者の価値が下がる」ということで、ワーキングプアが発生する。たとえグローバルな単一市場がまだ存在しなくても、企業は自由に世界中を物色し、最適な条件のところに進出する。売るにしろ、つくるにしろ、買うにしろ、である。

要約すれば、フリードリマンの言う「フラット化した世界」とは、「グローバル階級社会」のことであり、8、9割の人々が下流化したワーキングクラスを形成し、それを「富と知」を持つ階層が支配する世界のことである。「フラットな社会」が、水平的な平等主義的社会ではなく、垂直的な階級的社会であった、という皮肉である。
「フラット化した世界」とは、グローバルな市場万能社会であり、フリードリマンは、そのトレンドを拡大してみせたのだ。しかしそこには、市場経済はあっても共同体はなく、市場はあっても国家は存在していない。現在では基本的に2つの力が衝突している。国家、政治は、共同体を維持しようとして、グローバル単一市場に抵抗している。市場、経済は、グローバル市場を形成しようとして、国家という共同体を破壊しようとしている。
(中略)
ところがいま、市場原理のみが世界を席捲するならば、人々のよりどころである伝統的共同体(それは宗教、国家のみならず、家族をも含む)を破壊しつくしてしまう。近年、市場原理主義的グローバリゼーションへの反発が高まり、ノーベル経済学受賞者のジョセフ・スティグリッツコロンビア大学教授まで「グローバリゼーションは人間を幸福にしない」と叫びはじめたのは、このためである。
市場原理主義は、じつはそれに拮抗する道徳的価値観を持たなければ、容易に拝金主義に堕落する。拝金主義は一種のニヒリズムである。アメリカでもヨーロッパでも、市場と共同体のバランスを求めようと、人々は苦労している。EUやNAFTAは、その1つの答えなのであるが、日本はどこに均衡を求めようとするのだろうか?
残念ながら、これほど大きな問題にもかかわらず、日本のエコノミストも政治家も、その答を見出そうとはしていない。これは、毎日一生懸命働くフツーの国民にとって、最も不幸なことである。


■関連書籍

フラット化する世界(上)
日本経済新聞社
トーマス・フリードマン(著)伏見 威蕃(翻訳)
発売日:2006-05-25

フラット化する世界(下)
日本経済新聞社
トーマス・フリードマン(著)伏見 威蕃(翻訳)
発売日:2006-05-25

世界を不幸にしたグローバリズムの正体
徳間書店
ジョセフ・E. スティグリッツ(著)Joseph E. Stiglitz(原著)鈴木 主税(翻訳)
発売日:2002-05



Amazy

中央公論 2007年 10月号 [雑誌]


特集・古本生活入門
〈本好きの楽園へようこそ!〉古本屋を十倍楽しむ方法 岡崎武志
一日古書店散歩 東京編 池内 紀 京都編 山本善行
〈稀本からエロ本まで―業界今昔物語〉人生が詰まっているから面白い 対談 北尾トロ 樽見 博

関西在住の僕としては、古書店散歩が京都だけというのが寂しい。大阪や神戸、そして奈良とかもぜひ。



エンターテイメント系文学賞特集特集
これを読めば違いがわかる!エンターテインメント系文学賞攻略法
インタビュー:荻原浩
目指す君へ:羽原大介
アートなお仕事:ひびのこづえ

公募ガイドだけに実践向けの特集。



特集・私の血となり肉となった、この三冊
読み巧者108人の「オールタイム・ベスト3」
相田雪雄/青木 保/青柳正規/麻田貞雄/池部 良/石井英夫/石 弘之/石原信雄
伊藤惇夫/井上章一/猪木武徳/今谷 明/入江隆則/潮 匡人/牛村 圭/遠藤浩一
岡崎久彦/岡本行夫/岡田英弘/尾崎 護/梯 久美子/加地伸行/加藤尚武
上村幸治/亀井俊介/鴨下信一/川勝平太/北 康利/北村 稔/木村治美/切通理作
呉 智英/黒田勝弘/小池政行/小泉武夫/小谷 賢/高坂節三/後藤正治
小堀桂一郎/佐瀬昌盛/佐野眞一/佐々淳行/篠沢秀夫/田久保忠衛/高山正之
竹内 洋/谷沢永一/田原総一朗/塚本哲也/筒井清忠/土居健郎/徳岡孝夫
戸部良一/鳥海 靖/鳥居 民/長尾龍一/中嶋嶺雄/中島義道/中曾根康弘
仲正昌樹/中西輝政/長山靖生/西木正明/西澤潤一/野田宣雄/芳賀 徹
橋爪大三郎/秦 郁彦/長谷川三千子/林 望/春名幹男/東谷 暁/平野貞夫
平川祐弘/福岡伸一/福田和也/藤原作弥/船曳建夫/保阪正康/舛添要一
水木 楊/松井孝典/松沢成文/三浦 展/御厨 貴/神谷秀樹/水谷尚子/宮家邦彦
宮崎 勇/宮崎哲弥/宮脇淳子/森永卓郎/森本 敏/安田喜憲/八木秀次/箭内 昇
矢吹 晋/山内昌之/山折哲雄/山川静夫/山内静夫/吉崎達彦/吉田直哉
渡辺昭夫/渡部昇一/渡辺 保/渡邉恒雄/渡辺利夫

あまりの重厚なメンバーに名前をみるだけでお腹いっぱいになる。パラパラみてたら「聖書」を何人かの人が選んでいのが、ちょっと意外。