連作短編の形式をとった長編小説。先日読んだ『からまる』と同じように登場人物の視点が変わることによって、その人物の違った側面を照らしだす。自分が思っている自分と、他人が思っている自分は違う。けれど、『からまる』がそのことによって人の持つ心の深さや豊かさを掬い上げ肯定していたのに対し、この物語は真逆の眼差しを向ける。ここでは、人の心と身体はいかにばらばらの寄せ集めでできているか、そこに統一された人格・人間性などないということを、執拗に暴き立てていく。
消費者金融のローン地獄というテーマを扱い、金に絡め取られる人たちが登場するが、ここで本当に怖いのは金ではない。金やその場の感情によって簡単に剥がれ落ち、その隙間から覗くもう一つの自分の姿が怖いのだ。
年齢とずれた外見。誰かに着せられたようにしか見えない服。不自然な笑顔。斜めに傾いた姿勢。バランスの悪い服の色の組み合わせ。部分的にゆがんだ顔のパーツ。身体も心も統一感がなくギクシャクと生きる人たち。全ての目論見はどこかズレていき、過去と現在と未来がツギハギされる。
生きているあいだ、ずいぶんちぐはぐで変な人間だと思っていたけど、ここでこうしてばらばら死体になってみると、不思議なことに、初めてこの人らしい姿に落ち着けたように見えた。なんというか、形として、安定した。そうか、この人はずっとばらばらだったんだ、生きて動いているのにばらばら死体みたいな人間だったんだ
P18
読みながら少しづつ疑念が頭をもたげてくる。この登場人物たちが自分ではわからないように、僕も自分で気づいていないだけのではないだろうか。考えれば考えるほど自信が無くなっていく。他人の目からみれば、彼らと同じように僕もばらばらなのではないかと。
