『からまる』千早茜/角川書店 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

からまる
からまる
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千早 茜
角川書店(角川グループパブリッシング)
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 わたしは思いの全てを口にだしてしまう田村とは違う。けれど、たまにあのまっすぐさが羨ましくなる。わたしが小器用に覆い隠してしまったものを、あの子はむきだしにして生きて、どんなひどい目にあっても求めることを恐れない。ふらふら頼りなくみえてあの子はわたしより、ずっと強いのかもしれない。時々、そう思う。

自分はこういう人だと思う自分がいて。自分の中に隠しておきたい自分がいて。こうみられたい自分がいて。こうはなりたくないという自分がいて。人は誰も自分のなかに色々な自分がいる。

この連作短編集では短編ごとに主人公が変わる。視点が変わることで、さっきまで主人公だった人が、それまでとはまた違った姿をみせる。見ている人の数だけ姿は変わるけど、そのどれもが自分であるということ。自分には見えなかった自分の姿を知ることで、自分の中の自分が少し変わる。自分を見つめ、相手を見つめることで、その距離が少し近くなる。

俺は目を瞑った。目蓋を透かして光が入ってくる。視界は血管の色だ。女はいつもこれを見ているのだろうか。
 空から天窓を覗いたら、俺達はどんな風に見えるのだろう。ちっぽけな虫みたいに見えるのだろうか。


誰と繋がるか、誰と繋がらないかではなく、すでに生きているだけで人は多くの人と複雑にからまっている。その糸の先に誰かがいることを忘れ、乱暴に引っ張って切ってしまわぬように。傷つくのを恐れ、その糸を断ち切ってしまわないように。その糸が織り成す模様が、できるだけ美しくあるように、僕たちは今日もからまる。