『人間の建設』 小林秀雄・岡潔/新潮文庫 | 砂場

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人間の建設 (新潮文庫)
小林 秀雄 岡 潔
新潮社
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数学者・岡潔と小林秀雄との対談。寡聞にして知らなかったが岡潔氏はプロフィール欄によると「日本数学史上最大の数学者(中略)多変数解析函数論において世界中の数学者が挫折した「三つの大問題」を一人ですべて解決した(後略)」というもの凄い人だった。帯にある「史上最強の雑談」とある通り、二人で流れるままに興味のある事について話しているのだが、その切れ味たるや恐るべし。

岡 世界の知力が低下しているという気がします。日本だけでなく、世界がそうじゃないかという……。小説でもそうお思いになりますか。
小林 そうでしょうね。
P23


世界の知力について判断が下せるということは、世界最高レベルのかしこい人たちの言っている内容を掴んだ上でしか言えないわけで、なんだか雲の上の話だ。岡氏の専門の数学の話題など、当然難しい内容もあるが、僕のような凡人でも興味深く読める部分は多い。

岡 勘というから、どうでもよいと思うのです。勘は知力ですからね。それが働かないと、一切がはじまらぬ。それを表現なさるために苦労されるのでしょう。勘でさぐりあてたものを主観のなかで書いていくうちに、内容が流れる。それだけが文章であるはずなんです。P24

小林 高みにいて、なんとかかんとかいう言葉はいくらでもありますが、その人の身になってみたら、だいたい言葉がないのです。いったんそこまで行って、なんとかして言葉をみつけるというのが批評なのです。P140


今まで「勘」は「なんとなく」でマイナスイメージが強かったのだが、この本の岡潔は「勘」というものがいかに大切な感覚なのかを多く語っている。「勘は知力」という言葉は覚えておきたい。小林秀雄の「その人の身になってみたら、だいたい言葉がない」という部分にもとても納得した。言葉を操る人は多いけど、本当に心に響くのは、きっと言葉をみつけたり生みだしたりする人なのでしょう。

今まで対談本にはあまり興味はなかったが、こんなに面白いのなら積極的に読んでいきたいと思わせる内容だった。小林秀雄の本も今までは難しくて敬遠していたけれど、今後は挑戦していこうかなと。

蛇足

表紙の写真をみて「二人ともボサボサ頭だな…」と思っていたら、なんと解説は茂木先生! 天才の系譜はしっかりと受け継がれているようです。