『新編 普通をだれも教えてくれない』 鷲田清一/ちくま学芸文庫 | 砂場

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新編 普通をだれも教えてくれない (ちくま学芸文庫)
鷲田 清一
筑摩書房
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新聞など一般の人向けの媒体に書かれたもがほとんどなので、哲学的でありながらとても分かりやすいエッセイ集。。テーマは多岐にわたるが、全体を通して普通とは何かということが問い直されている。はしがきで鷲田氏は普通についてこう書いている。

「普通」というのはたぶん、生きていくうえでほんとうの拠りどころとなる単純なことなのだろう。あるいは、ひとが心から納得でき、それに素直に従うことのできること、あるいはそれには従わねばならないと思えること。
(中略)
それは思想や倫理や常識として、つまり知識として学ばれるものではない。それよりもむしろ、人と人とがからだをつきあわせて生きる場面で、このからだが底の底から納得するものではなくてはならないだろう。


普通という定義が失われたのではなく、普通を体得する環境が失われた。だから、私たちは普通を見失っているのではいかという問いかけ。このエッセイ集では自明のことと思われがちな普通が、いかに脆いものなのかが浮き彫りにされる。「電話」「制服」といったテーマから、「神戸児童殺傷事件」「阪神大震災」という大事件、「食」「性」など身体的な感覚、「私的空間」「都市」が生みだす空間などを哲学の視点から真摯に見つめなおす。

普通が失われたため人は混乱し、失われた普通を求めてさらに逸脱していく。そんな現代を生きるわたしたちが「普通」といかに向き合っていくのかを深く考えさせられる。やわらかい語り口も魅力的だ。