『新教養主義宣言』山形浩生/河出文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

新教養主義宣言
「新教養主義宣言」
[文庫]
著者:山形 浩生
出版:河出書房新社
発売日:2007-04
価格:¥ 798
by ええもん屋.com



まずみんな、結論さえ聞き慣れたものなら、そこに至るプロセスの整合性はほとんど考えない。それだから、大半の文やメディアや情報は、なくても一向にかまわない代物と化しているだろう。すべて「アレ化」して、おもしろさも心のときめきも全部失われて、みんな単語にしか反応しなくなる。「複雑系。ああアレですか」「金融再編、ああアレですか」「情報化、ああアレですか」。アレになった瞬間に、その話題からはすべてのフックが失われて、その文は頭を素通りする。


でもそれに対する手だては一つ。「アレじゃございません」と言うことだ。同じ前提から、全然違う結論をたくさん導くことだ。だって言えるもの。みんなの議論、穴ばっかりだもん。

この本は山形浩生が雑誌媒体に書いた文章を単行本のまとめたものの文庫化だ。扱っているテーマはインターネットやコミュニケーションメディア論から消費税や投資などの経済問題、平和・人権・民主主義からエンターテイメント分野、書評とかなり幅広い。ここで語られることは聞き慣れた結論ではない。消費税7%や選挙権の売買を主張し、エコロジーや平和運動を攻撃し、あらゆるジャンルについて斬新な議論を繰り広げる。自分の主張の正当性を論じることによって、聞き慣れた答えへを打ち崩してゆく

プロローグに書かれる「いつだって、伝えるべきなのは、その教養そのものじゃない。その教養の持つ力であり、おもしろさだ。」という言葉。本書はまさに教養というものの面白さを教えてくれた。教養というのは物事を単純化してわかったつもりになるのではなく、その複雑な構造を様々な知識や理論を駆使して分析していくことなのだろう。という言葉が教養というものを単純化しているような……。教養を身につけるために精進したいと思います。

★★★★☆