本屋大賞ノミネート作品。摩訶不思議な京都を舞台とした、天真爛漫な女学生の冒険と、彼女に片思いする大学生が全身全霊を込めて空回りをする連作短編集。森見登見彦を初めて読んだが、面白すぎる。これは間違いなく傑作。
これは彼女が酒精に浸った夜の旅路を威風堂々と歩き抜いた記録であり、また、ついに主役の座を手にできずに路傍の石ころに甘んじた私の苦渋の記録でもある。読者諸賢におかれては、彼女の可愛さと私の間抜けぶりを熟読玩味し、杏仁豆腐の味にも似た人生の妙味を、心ゆくまで味わわれるがよろしかろう。
(第一章「夜は短し歩けよ乙女」より引用)
第一章「夜は短し歩けよ乙女」では京都の木屋町、先斗町界隈を飲み歩き、次の「深海魚たち」では下鴨神社の古本市で子どもの頃に好きだった絵本を探し廻る。「御都合主義者かく語りき」では学園祭を満喫すべき歩き渡り、「魔風邪恋風邪」では仲間たちが次々と風邪に倒れるなか、ひとりお見舞いに東奔西走する
主人公二人の愛すべきキャラもさることながら、老若男女な脇役たちもそれぞれ魅力的で人間とは思えないほど個性豊かだ。こんなに濃いメンバーを集めたにもかかわらず、物語は爽やかというのは、ひとえに作者の力量だろう。
京都は歴史のある街であると同時に、大学の多いために若者の街でもある。その独特の空気を利用して、古色蒼然としながらも活気に溢れ、格調が高いようでバカさ全開という、傑作エンターテイメント小説に仕上がっている。
★★★★★
