『一瞬の風になれ』佐藤多佳子/講談社 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ--
「一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--」
[単行本]
著者:佐藤 多佳子
出版:講談社
発売日:2006-08-26
価格:¥ 1,470
by ええもん屋.com

一瞬の風になれ 第二部
「一瞬の風になれ 第二部」
[単行本]
著者:佐藤 多佳子
出版:講談社
発売日:2006-09
価格:¥ 1,470

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-
「一瞬の風になれ 第三部 -ドン-」
[単行本]
著者:佐藤 多佳子
出版:講談社
発売日:2006-10-25
価格:¥ 1,575



本屋大賞ノミネート作品。第136回直木賞候補作。高校の陸上部を舞台として、二人の若者と仲間たちの成長と友情を描いた青春スポーツ小説。全3巻。とにかく爽やかで、風を感じることができる物語だった。

Jリーグ入りが有望なサッカー選手を兄に持つ主人公・新二。幼い頃からサッカーを続けているが、自分には兄のような才能がないことに悩んで、高校入学を機にサッカーを辞める。幼馴染の連は中学の全国大会で活躍するほどの才能豊かなスプリンターだったが、部活に馴染めずに陸上から離れていた。そんな二人は強豪とまではいかない陸上部に入部することになる。

ここまで爽やかに感動できる物語もなかなか無い。現実の高校陸上部はこんなに爽やかではないだろうし、直木賞の選評でもそのあたりのリアリティの無さで受賞を逃したように書かれていた。この小説で描かれる「努力」「友情」「勝利」というジャンプのような分かりやすさは、確かに現実世界には無いかと思われる。でも、だからこそ僕はこの物語が好きだと思う。努力が確実に報われ、友情は決して裏切られず、挫折は成長に結びつき、それらの力が合わさり勝利が生まれる。主人公の新二が陸上部の仲間や顧問の先生、家族を心から信頼しているように、読んでいる自分も彼らのことを何も考えずに信頼し、応援し、喜びを分かち合えることができる。現実には有り得ない。でも、もしこんな奴らが現実にいたら、どんなに素晴らしいだろう。そう心から思わせてくれる物語を読み、心の奥に仕舞い込むことができるのは、本を読むことの大きな喜びだと、僕は思っている。

★★★★★