「動物のエンジン」「サクリファイス」「フィッシュストーリー」「ポテチ」の四編を収録。伊坂作品の脇役たちが活躍するスピンオフ的な短編集になっている。僕は伊坂作品は好きで全部読んでいるのだが、そのわりには、黒澤以外は誰がどの作品にいたか覚えていなくて、なんかこういう人がいたなとぼんやり覚えている程度。それでも十分に楽しめるので、他の作品を読んでいなくても問題はないかと思う。
他の書評などを見ると「ポテチ」がダントツ人気で次に「フィッシュストーリー」を紹介している人が多かったので、ここは僕のお気に入りとなった「動物のエンジン」を重点的に書いておくことにする。
深夜、動物園でうつ伏せに寝ている男がいる。彼が園内にいると動物たちの雰囲気が違うという。まるで「動物園全体にエンジンがかかった感じになるんだよ。空気が震えて。嬉しそうで」のようだと。物語は彼の謎の行動ついて、3人の男たちが推理するというものだ。日々、シンリンオオカミの檻の前に横たわっている彼は、朝になると動物園をでて、近くで行われているマンション建設の反対運動の主婦たちに混じってプラカードを持ち、道端に立つ。いったい彼は何者で何をしようとしているのか。静まり返った夜の動物園のベンチに座り、うつ伏せの男を横目に男たちの軽妙な推理ゲームが繰り広げられる。誰もいない深夜の動物園の雰囲気や、洒落た会話のやりとりなど、とにかく雰囲気が気持ちいい。
表題作の「フイッシュストーリー」は売れないミュージシャンの心の叫びが時空を越えて世界を救う(笑)という壮大な物語。「サクリファイス」は伊坂作品の中でも屈指の人気を誇る黒澤が大活躍。唯一の書き下ろしである「ポテチ」にも黒澤は登場するが、こちらの主役はニュートンの法則をなんとなく自力で発見したことでお馴染みの今村。天才のひらめきを持つが、無知で感覚だけで生きているような、善良な空き巣の今村の可笑しな日常を描いているのかと思いきや。ポテチを食べるシーンなどの伏線の数々が解き放たれる終盤は見事だ。
★★★★★
■「フッシュストーリー」はホラ話という意味。このタイトルで思い出したのはこれ!
「ビッグフィッシュ―父と息子のものがたり」
[単行本]
著者:ダニエル ウォレス
出版:河出書房新社
発売日:2000-02
価格:¥ 1,680
[単行本]
著者:ダニエル ウォレス
出版:河出書房新社
発売日:2000-02
価格:¥ 1,680


