『座右のゲーテ』斉藤孝/光文社新書 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

齋藤 孝
座右のゲーテ -壁に突き当たったとき開く本

ベストセラー本。若かりし頃『ゲーテとの対話』に感銘を受けた斉藤孝が、ゲーテの言葉から学んだことを書き記した。斉藤孝による「ゲーテとの対話との対話」。斉藤孝氏は研究者として壁にぶち当たった時、この本と出会ったことによって、自らの道を見つけたという。

ゲーテから多くを学んだ斉藤孝氏。彼の著作の中心となるのは、何かを生み出すための本だ。『読書力』『書く力』『質問力』『発想力』。まさに具体的でかつ本質的なものを追及している。これらの著書は、ゲーテの言葉から生まれたとも言える。

ここで選ばれているゲーテの言葉は、本質論というよりは方法論である。本質論なら理解するだけで完結するが、方法論は実践しなくては意味がない。読んで理解して完結するのではなく、実践することにより本質的なものに近づいていく。本質的とは、探しもとめるのではなく、積み上げていくものなのだろう。

個人的に興味がある箇所を引用。

■文章の書き方として

仕事や技術についてもこれと同様、絞り込みがコツである。ゲーテ自身が「一番よいのは、対象を十か十二くらいの小さな個々の詩にわけて書くことだろうね」と言っているように、まずはテーマを小分けにし、それから一つ一つを絞り込んでいく。すると、レーザー光線のようにエネルギーを一点に集中させることができる。

自分のいちばん大切なものをみだりに話してしまうと、日常と地続きになってしまい、聖域という感覚は失われる。それに伴い、意識も薄められてしまうものだ。
「胸にしまっておけ」とゲーテが言うのは、個々の思索の具体的プランをあれこれ話すべきではないというより、その人の魂にとって大事なことをむやみにしゃべるなという意味だろう。語らず心にしまっておくことで、エネルギーは満ちてくるものだ、と賢者たちは教えている。

■本の読み方として

書物は新しい知人のようなものである。初めのうちは、大体において一致し、わたしたちの存在の何らかの主要な面で親しく触れ合うのを感ずれば、それで大いに満足している。やがてもっとよく知り合うと、ようやく差異がはっきりしてくる。そうなると、とるべき理性的態度の要点は、たとえば若いときのようにすぐにしりごみしたりせず、ほかならぬ一致点をしっかりとおさえて、だからといってすっかり一致しようなどと思わずに、差異を完全に自覚することである。

ゲーテに、「人は愛する対象からしか学べないのだ」と断言されると、気が楽になるところがある。日常生活においては、相性の悪い人ともつきあわなければいけない。だが、本当に大事なものを学ぶのであれば、情熱が湧くような相手でなければむずかしいとゲーテは言う。自分が惚れ込める人をつくることだ。

■関連図書

エッカーマン, 山下 肇
ゲーテとの対話 上 岩波文庫 赤 409-1

エッカーマン, 山下 肇
ゲーテとの対話 中 (2)

エッカーマン, 山下 肇
ゲーテとの対話 下  岩波文庫 赤 409-3

ゲーテ, 高橋 健二
ゲーテ格言集