『東京バンドワゴン』小路幸也/集英社 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

小路 幸也
東京バンドワゴン


現在発売中の「編集会議」一月号の企画で、「書店員が選ぶ2007年ブレイクする作家6人 」の中に小路幸也が選ばれている。(ちなみに残りの5人は、坂木司、佐藤多佳子、中村航、三羽省吾、森見登美彦。順当なメンバーかな。)。本の雑誌が選ぶ「2006年上半期ベスト10」ではこの本が4位に選ばれていた。

東京の下町で明治十八年に創業された古本屋「東京バンドワゴン」。そこで暮らす9人の大家族と、同じ町内に住む顔なじみの人たち。ホームドラマを見ているような、騒々しさと懐かしさと温かさが伝わっている物語。死んだお婆ちゃんの一人称という文章が内容と絶妙に合っている。愛情にあふれた口調で温かく家族を見守るお婆ちゃんの言葉で語られているので、読者の僕も、お婆ちゃんのように大家族の個性的な人たちを、やさしく見守るような視線で読むことができた。

春夏秋冬の4章に分かれた物語は、それぞれの季節に不可思議な出来事が起こる。そんな数々の謎を解き明かして、大団円というのがパターンだ。ミステリー仕立てだから、不穏な事件が起こるのだが、読後感はものすごく爽やか。それは悪人が一人もでてこないからだ。でてくる人が次から次とみんな善人。そんな人たちが大騒ぎをしながら不器用に立ち回り、昔の過ちを償おうと悪戦苦闘したり、空回りしたり、バカ騒ぎをしたりするのだから、これはもうお婆ちゃんと一緒に温かく見守ってあげるしかない、という気持ちに自然となっていく。

安心して物語を楽しめる気持ちのいい読書が味わえて、評判がいいのも納得。ドラマ化されそうな気がする。続編は必ずでるだろう。

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