『書店繁盛記』田口久美子/ポプラ社 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

田口 久美子
書店繁盛記


ポプラビーチ で連載されていた書店日記の書籍化。すでに読んでいるものも多かったが、やはり長文をまとめて読むには書籍でないと疲れる。

田口さんはリブロからジュンク堂に転職、現在は池袋本店の副店長をしている。新店オープンの話では2週間で2万箱の検品をしたと書かれていて驚いた。さすが大書店は違う。使われていないボウリング場に荷物を運び込んで10人がかりだそうだ。うちでは40箱ぐらい入ってきたら検品地獄だと言っているのに、桁がいくつ違うことやら。

棚ががら空きになっているのをみると、売れた! と喜ぶより、盗られた心配が先にたつ。

書店の規模とは関係なく万引きに苦しめられているのは変わらないようで、まさに同感。お客様のクレームの激しさも身にしみてわかる。書店員の苦労というのはどこも同じか。大書店なのでお客様の数も多いためか、変わったお客様も多いようだ。ここで紹介されている「首をつっても切れないロープの結び方」の本を探すお客さんはすごいなと思う。

僕が接客したことのある、「ドラッグの止めかたの本」を探しに来られた、やつれ果てた年配の女性を思いだした。首と足にギブスを嵌めて松葉杖を突きながら「交通事故の示談の本」を探してこられた人もいた。「退職届の書き方の本」をくれというサラリーマンは、怒りのあまり会社を飛び出した勢いで、そのままやってきたのが見てとれた。本屋にはいろんなお客さんがくて、時にその人生を垣間見る。

そういった書店でのエピソードだけでなく、書店の実務的なことも多く書かれている。品揃えに関するジュンク方式とリブロ方式の違い。各ジャンルごとの担当者と、売れ行きの傾向や棚作りについて話したことなど、同じ書店員として深く勉強になった。もちろん僕の勤める店は地域密着の郊外店なので、ジュンク堂のように品揃えで勝負するわけでもなく、リブロのように書店がコンセプトをつくって選んだ本を提供するわけでもない。地元のお客様の求められる本、必要とされる本を置きたいと思っている。だからこそ、本書にあった以下の言葉を胸に刻んでおこうと思う。

書店は書店員だけが棚を作るのではなく、お客さんが作ってくれるのだ、といつも思う。もう開店して八年になる、お客さんとの「息のあわせ」の積み重ねの結果、ともいえるのではないか。


■ 書店員&本屋に関する本

久世 番子
暴れん坊本屋さん (1)

田口 久美子
書店風雲録


松浦 弥太郎
最低で最高の本屋

渡辺 満
なぜ人はジュンク堂書店に集まるのか―変わった本屋の元大番頭かく語りき

永江 朗