『影をなくした男』シャミッソー/岩波文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

シャミッソー, Adelbert von Chamisso, 池内 紀
影をなくした男

好きなだけ金貨がでてくる"幸運の金袋"と自分の影を交換。大金持ちになるも、影がないばかりに世間からは人間扱いをされず苦難の人生を歩む男の物語。

150ページに満たないこの寓話的な物語の魅力は主人公の人間的な魅力だ。悪魔に翻弄されて苦難の人生を生きることなる主人公だが、そもそも欲に目がくらんだのが発端。ちょっと間の抜けた青年で、行く先々でもいかがなものかという行動を取る。召使の一人がとても優秀で主人公のために生きるような男なので、なんとか暮らしているが、彼がいないと悲劇にもならずに、悪魔に騙されたバカな男として終わっているだろう。

だが召使の彼がそこまで尽くすのも、主人公・シュレミールに魅力があるからだろう。

シュレミールはこのうえなく人間的である。涙もろくて心やさしいのだ。女に惚れっぽくてたよりない。たえず反省しつつ軽はずみである。人のやさしさにはより以上のやさしさでこたえないではいられない。(訳者解説より)

その性格ゆえに悪魔に騙されて、その性格ゆえに仲間から助けられる。そんな教訓めいたことを色々と読み取ることもできるけど、主人公の波乱万丈な人生は物語として面白い。読みやすいので小学校高学年ぐらいから大丈夫だろう。


■なくした男の物語たち

ゴーゴリ, 平井 肇
外套・鼻
…鼻をなくして探し回る男。
なぜかパンの中から発見!


H.F. セイント, H.F. Saint, 高見 浩
透明人間の告白〈上〉

H.F. セイント, H.F. Saint, 高見 浩
透明人間の告白〈下〉
・・・身体を無くした男。
本の雑誌が選ぶここ30年のベスト1
著者は現在行方不明らしい。
まさかほんとに透明人間になったとか。