『正義の見方』宮崎哲弥/新潮OH!文庫 | 砂場

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宮崎 哲弥
正義の見方

宮崎哲弥のデビュー作。1993年から1996年に雑誌などに掲載された論評を集めたものだ。夫婦別姓問題、オウム真理教などの宗教問題、戦争責任、天皇論、宮崎勤などの時事問題・政治問題。また、被害者が加害者を土下座させられることから日本人特有の罪と罰の意識を論じたり、80年代後期から90年代初期にかけての時代を小泉今日子という存在を通じて考察するというアクロバティックな論評もある。

どの論評もそれぞれの問題に深く入り込んだもので、読み応えがあった。10年近く前に起こった事件について書いているが、戦争責任や天皇論、凶悪犯罪も増加など現在の事件のことのように読むことができた。それぞれの事件の表面的な部分を扱っているのでは無いということだろう。日本人特有の罪と罰の考察は、数年前に自己責任論という形で噴出した。土下座問題で書かれている内容を、自己責任論の問題として当てはめて読んでも、しっかりと意味が通じる。10年前の本を今読んだからこそ、そこで言われていることが、過去の事件に当てはめただけの理屈ではない本質的な問題について論じているということがわかる。さすが宮崎哲弥。

以下、気になった文の引用。

悪い行いをしたものが神妙に非を認めれば、なんらかの形で「許し」が用意される。しかしもし陳謝を拒否すれば、激しい非難にあう。「悪行」に対してではなく、「謝らない」事実に批判が集中するのである。また反対に、素直に非を認めて謝意を示した者を、さらに追及して責任を問おうとすると、一転して、今度はしつこく問責する側に批判の矛先が向かうことになると、ベンダサン(引用者注・山本七兵のこと)は指摘している。
…イラク人質事件を思い出した。あの時、勧告を無視してイラクに行ったとはいえ、人質の救出のために国家としての責任の範囲内で手を尽くしていた行政側に対して「しつこく問責」した肉親に「批判の矛先」が向かった。



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