『夏休み』中村航/河出文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

中村 航
夏休み


中心となる登場人物は4人。輸入商品の説明書を翻訳する仕事をする主人公マモル。特許事務所で働く妻ユキ。ユキの親友の舞子さん。その結婚相手の吉田くん。普段は無口な吉田くんは夜になるとペラペラしゃべりだすらしい。どこからか中古カメラを買ってきては分解して、また組み立てるらしい。マモルとユキ夫妻は、吉田くんがお気に入りで、そんな話を楽しそうにする。マモルは、吉田くんと自分との関係を「義理の友達」だと思っていた。

ある日、吉田くんが家出をする。突然の大事件に3人はビアホールに集まった。

「よし」と、ユキは言った。「旅にでよう」
ユキは明日に向かって宣言した。
「吉田くんを探しにいくのよ」
よく通る声でユキは言った。
「そうだ!」
大きな声で僕は同調した。
「いや、むしろ、私たちが家出するのよ」
「それだ!」
「家出には家出。質問には質問。花束には花束よ」
「なるほど!」

読みやすい文体。軽快な会話のやりとり。なにより、この物語の登場人物たちいは、それぞれお互いが大好きだという関係が読んでいて心地いい。仲がいいとか分かり合えているというよりも、お互いがそれぞれのファンのようだ。そして物語の後半で活躍するマモルと吉田くんのコンビのやりとりが、この小説の読みどころ。義理の友達という微妙な関係。そのギクシャク感を楽しむかのようなマモルの行動と言動に、真面目に答える吉田くんのキャラは稀にみる名コンビだ。他にも同居しているユキの母親やレンタカー屋のお兄さんなど脇役陣の活躍も目が話せない。

ほんのささいな事でも、ファンになればこんなに楽しめることはない。なんてことを思った。

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