『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』フィリップ・K・ディック/ハヤカワ文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

フィリップ・K・ディック, 浅倉 久志
パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

時代は火星への移民が行われている近未来。移民といっても増えすぎた地球の人口を減らすための強制移住のようなもの。火星の劣悪な環境で生きる希望を無くした人々は「キャン・D」という名前のドラッグで現実逃避の生活を送っている。主人公は地球のP・P・レイアウト社に勤務。この会社はパーキーパット模型セットというものを生産・販売している。この商品は火星で暮らす人びとが「キャン・D」でトリップするときに使用する。「キャン・D」でトリップするとパーキーパットの人形や模型パーツで作られたドールハウスの世界に入ることができるという仕掛けだ。主人公はこの会社の流行先取り課に勤務している未来予知能力者だ。つまり未来をある程度予知する能力を持っている。物語は星間実業家パーマー・エルドリッチが銀河系の彼方から新種のドラッグ(チュー・Z)を持ち帰ってくることによって動き始める。

半年に一冊か、年に一冊のペースでディックの小説を読んでいる。現実と虚構が交錯し、目の前の世界が音を立てて崩れていくようなディックの世界を、僕は時々読みたくなる。不安定な現実の世界を客観的に読むことによって、僕がいるこの世界は、確実に現実であると再認識したくなるのかもしれない。ディックの小説は作り話だが、僕のいる世界は現実だと。