ブリジット オベール, Brigitte Aubert, 堀 茂樹, 藤本 優子- マーチ博士の四人の息子
久しぶりに翻訳ミステリー。表紙の和田誠の絵が気になったのと、アゴタ・クリストフが絶賛という理由で読み始めた。ハヤカワ文庫で何作が出版されていて、そこそこ人気のある作家さんだ。
ストーリーは単純だ。殺人鬼の日記の隠し場所を見つけてしまった家政婦。そこに夜な夜な書き記されていく殺人鬼の記録。それを読み、家政婦は自らも日記を記すことで考えを整理して、自分にも被害が及ぶのではないかと怯えつつも、犯人を探る行動を取る。日記から推測されるのは四つ子である博士の子供たちの、誰かが犯人だということ。クラーク、マーク、ジャック、スターク。このうち誰が殺人鬼なのか。
殺人鬼の部分はアゴタ・クリストフ『悪童日記』の翻訳と同じ堀茂樹氏、家政婦の部分は藤本優子さんという変わった趣向になっているが、かなり成功している。原文で書き分けられているとはいえ、やっぱり別人が描いたほうが、より別人の日記らしくなるのは当然。二人の対比が強くなっていて、物語に入り込みやすい。
単純なストーリーながら読者を飽きさせない構成。事件は次々と起こり、事実が少しづつ明らかになってゆく。ところどころ、読者にも自然と犯人を推理させるようなヒントが意味ありげに配置されている。殺人鬼と家政婦戦いは物語が進むほど緊張感は高まり、より過激により感情的になり、終盤はページをめくるのがもどかしいほどだ。そして、全てが明らかになるラストシーン。
登場人物の人間性などの書き込みが少ない、という推理小説特有の欠点はあるが、推理小説としての完成度は高い。次に推理小説が読みたくなった時は、ブリジット・オベールの他の作品を読んでみようと思う。
参考書籍
- アゴタ クリストフ, Agota Kristof, 堀 茂樹
- 悪童日記