『ホラージャバネスク読本』東雅夫・編/双葉文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

東 雅夫
ホラー・ジャパネスク読本


現在の日本ホラー小説の重要人物たちの対談集。宮部みゆき、津原泰水、岩井志摩子、福澤徹三、加門七海、京極夏彦、三津田信三。最近は特にホラー小説を読んでいないのだが、このメンバーでは読まないわけにはいかない。

――加門さんの霊感は、作家としてプラスになっています?
加門 いやー、マイナスでしょう。だって自分で感覚的に分かっていると、分からない人への説得力にどうしても欠けるもの。(中略)自分が読者として幽霊とかが出て来る描写を読んでも、「視えない」と言っている人のほうが巧いし、怖い。

京極 小説の面白さって、小説自体にあるんじゃなくて、読書という行為の中にこそあるんですよね。読者の中に、感動したり怒ったり笑ったりという感情が湧くから面白く感じるわけで。要は読み方の問題なんですよね。そうした読み方を、テキスト自体がある程度誘導できるものが良い小説なんじゃないかと思ってるわけです。

京極 怖さって、自分自身の問題として捉えるから怖いんですよね。他人事じゃ怖くない。(中略)だから怖がらす小説というのは、小説のなかでいちばん難易度が高いと僕は思ってるんです。(中略)難易度が高いということは、すなわち王道を往くものなんだろうと、そういうふうに考えるのですね。ならば小説の王道は怪談なんだろうと。

京極 たとえば恋愛小説なんかの場合は、主人公に己を重ねることによって夢を見たり悲しんだり良い思いをしたりするわけですが、まったく第三者的、野次馬的に読むこともできる。両方の読み方が許されるし、また双方の特性で成り立ってるところがある。読者の中の欲求を満たすようなことが書いてあれば、まあ、とりあえずはイケる。

東 まあ、概してハードルが低いですよね。

京極 あ、いや、決して恋愛小説を愚弄しているわけではないのです。志の高い、高度な技術を使った優れた恋愛小説だってあるわけです。ただ、恋愛小説の場合は、ハードルが低いところでも完成してしまう可能性があるわけ。でも怪談はね、ハードルを低くしたらなァんにも面白くなくなっちゃうんですよ。それなら書かないほうがマシというものになる。ハードルが高いだけでなくゲートも狭いの。それを考えると難しいなあと……。

僕は「視える人」が書いたホラー小説が苦手だ。加門七海さんもそうだが、高橋克彦などは完全に駄目。景山民夫は投げ捨てようかと思った。ホラー小説で怖がらせるのは難しい。特に長編小説は無理だろう。短編で怪談風なもの怖いものがある。このメンバーだと福澤徹三がそうだ。