『よくわからないねじ』宮沢章夫/新潮文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

宮沢 章夫
よくわからないねじ

私は、「ものを計っている人」がたいへんに好きだ。

(中略)
自宅で葬儀をすることになり、祭壇を据えるためにその寸法を計ろうとしたとしよう。メジャーを床にあてる。そして彼は、言うだろう。
「二メートル……、七十二センチ」
この、二メートルと口にした次の「間」だ。その瞬間、自分がいま、なんのために寸法を計っているのかまったくわからなくなるのだ。つい計ることだけに集中してしまう。祭壇のことはもちろんだが、これから葬式をすることも、そればかりか、親が死んだことすら忘れてしまう。それが、「ものを計っている人」だ。

「計るとは、抽象化への意思である」より引用


視点の斬新さはエッセイの大事な要素だが、宮沢章夫の視点は凄い。日常のなかの微妙な違和感を掴み取り、独断と偏見によって違和感の理由を徹底的に検証。そして、とことんまで突き詰め、さらに独断と偏見を加えて発展させていく。

扱うテーマは下らないものが多い。「スイカの思想」だったり「くしゃみの問題とその対策」「オブラート」。どうでもいいことを大真面目に検証する。深いはずのテーマをバカバカしく扱っているのも面白い。堕落に憧れる著者にとって隣人のスポーツ一家は敵だとする「堕落の闘争」など。

これからも読んでいきたい、お気に入りの作家がまたひとり増えた。