『砂漠』伊坂幸太郎/実業之日本社 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

伊坂 幸太郎
砂漠

発行が12月じゃなかったら本屋大賞の一次選考に投票したかった作品。


大学生活を描いた青春小説。主人公を含めて5人の仲間たちがいるのだが、注目はサンボマスターを彷彿とさせる西嶋のキャラだろう。主人公の北村は世の中を遠くから見下ろす俯瞰型。友人の鳥井は目の前のことだけを楽しむ近視型。そして西嶋は近視の鳥だった。世界平和を願って、麻雀でピンフ(漢字で平和と書く)を上がりつづけようとしたりする。


「俺が言いたいのはね、どうして、あの雀荘のオヤジたちは、俺の仕送りをあんなに必死で奪っていったかってことなんですよ。平和をね、平和を作っている俺の金を。平和を願ったピンフをね、満貫、ハネ満でやっつけて、何が嬉しいってことですよ」


この3人と表情がほとんど変わらないクールな美女の東堂、おっとりした性格で超能力の持ち主の南の5人が登場する。あいかわらずの小気味いい会話文と、ちょっと仕掛けなど、伊坂ファンの僕としては読み終えるのがもったいなく思えたほどだ。


西嶋はサン・テグジュペリの『人間の土地』を愛読していて、よく引用する。おかげで僕も買って読んでしまった。本書でも引用されているが、サン・テグジュペリの言葉に「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」というのがある。本書はまさに、そんな物語だった。爽やかで清々しい読後感。


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