『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男/文芸春秋 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

古川 日出男
ベルカ、吠えないのか?

前回の直木賞候補になり、書評でも評判がいい。雑誌ダヴィンチでは、わかる人にはわかる、ハマる人はどっぷりハマる「今月のいぶし銀」に選ばれていた。


戦争の世紀とは軍用犬の世紀、犬の世紀だ。第二次世界大戦のアリューシャン列島。キスカ島に置き去りのされた4頭の軍用犬。その子孫たちは世界中に散らばっていく。アメリカの軍用犬になり朝鮮戦争、ベトナム戦争へと赴くもの。また朝鮮戦争で中国軍に捕獲されベトナム戦争へと駆りだされる。ソ連の軍用犬となりアフガン戦争に極秘に送り込まれる。軍用犬にならななった犬たち。あるものはアラスカにいる。毛並みの美しさからドッグショーの世界へと足を踏み込む。野犬となって追われる。太平洋を彷徨う。地の底を這う。


飼い主が変わり、世代が変わり、国家が変わる。この物語は犬の視点からみた第二次世界大戦以降の世界史だ。うぉん。イヌ族の歴史で重要な年号がある。1957年。これは本書でイヌ紀元0年とされている。ソ連のスプークトニク2号に乗ってライカ犬のライカが地球周回軌道から地上を見下ろした年。うぉん。そして、1960年、スプートニク5号で宇宙へと打ち上げられ生還した2匹の犬の名前が「ベルカ」と「ストレルカ」だ。


不思議な小説だった。古川日出男は初読だが、鬼才といった感じだろうか。僕の好きな作家のなかでは筒井康隆に近いかと思う。確かに万人向けではないし、僕も全ての意味を理解したとは言えない。歴史なのだから意味など無いのかも知れない。読者を選ぶのでお薦めしにくいが、中盤で犬が月を見上げるシーンの感動は味わって欲しいと思う。そこであまりに感動してしまったので、僕のなかで後半が色褪せてしまったのが残念。うぉん。