『ナラタージュ』島本 理生/角川書店 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

島本 理生
ナラタージュ

本屋大賞の有力候補。各誌で絶賛され、本の雑誌2005年上半期ベスト10で文句なしの1位に選ばれた。高校を卒業した生徒と先生の微妙な恋愛関係。

映画の回想シーンのことを「ナラタージュ」と呼ぶらしい。タイトル通りに全編が回想シーンのごとく印象的に描かれる。記憶に焼きつくような鮮明なシーンが次々と現れる。ずっと音もなく小雨が降り続いているようなイメージ。静かで、せつない。

今でも呼吸するように思い出す。季節が変わるたび、一緒に歩いた風景や空気を、すれ違う男性に似た面影をさがしている。それは未練とは少し違う、むしろ穏やかに彼を遠ざけているための作業だ。記憶の中に留め、それを過去だと意識することで現実から切り離している。

プロローグで二人は結ばれないと分かっているから、どんなエピソードも切ない。息が詰まるような空気を描き出す文章力は見事だ。男性陣が不甲斐なくて歯がゆいが、それもリアリティの追求だと思っておこう。恋愛小説が読みたいという人には超おすすめで、恋愛小説は苦手だという人にも薦めたくなる。