『ぼくは死んでいる』フィリップ・ベッソン/ハヤカワ文庫HM | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

フィリプ・ベッソン, 稲松 三千野
ぼくは死んでいる

本書で日本初上陸の著者だがフランスでは書評家たちに絶賛される人気作家であり、映画化された作品もあるとか。今回はハヤカワ文庫HMから出版されているが、特にミステリ作家というわけではないようだ。本書もミステリーだと思って読むと肩透かしを食らうだろう。


主な登場人物は3人。主人公のルーかと恋人のアンナ。そして、男娼のレオ。この3人の視点が入れ替わりながら物語りは進んでいくのだが、本書の最大の売りは主人公のルーカがすでに死んでいることだ。死体である目線から警察の対応や検死の様子から棺桶の居心地(快適そうな様子)、そして恋人たちのことを想う。


死体の一人称で書かれた小説を読むのは久しぶり。なんだか心地良さそうな死体の世界。アンナとレオは打ちひしがれているのに、死体のルーカはのん気なものだ。淡々とした描写。話は盛り上がっているはずなのに、どこか遠くから聞こえてくるような雰囲気は、フランス映画をみているような気分だ。そして、死体小説かと思っていたら完全に恋愛小説。少し物足りない気がするが、そのぶん別の作品も読みたくなる。別作品の邦訳を待望。


それにしても、これはミステリーで読ませる物語ではないだろうに、なぜハヤカワHM? せめてFTではないかと。