『復活の地』小川一水/ハヤカワ文庫JA | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

小川 一水
復活の地 1

全3巻。「2005年版SFが読みたい!」国内篇3位。バイト君の推薦もあり読み始めたのだが、これがなかなか面白い。小川一水は表紙をみてもわかるがライトノベル系の作家。ジャンプノベル大賞出身なので乙一の後輩だが年は上で1975年生まれ。僕と同い年。ということは二十歳の時に阪神大震災が起こった年令だ。


架空の星の架空の国で国家の中枢機関が全て破壊さるほどの大地震が起こり、数十万の市民の命を奪う。植民地総督府の官僚であった主人公は亡き上司の遺志に従って震災直後の現地へと入り、混乱のなか震災対策に奔走する。

交通網、情報網、全てが寸断され、内閣など全ての行政機関が壊滅のなか、消防や警察は組織的に動くことができず、被害は拡大を続ける。行政機関では唯一建物の崩壊を間逃れた帝都庁(たぶん東京都庁みたいな存在)の役人も上司不在で指示がないので動けない。そんな帝都庁に主人公が乗り込み、権限を無視した的確な対応策を次々と打ち出していく。


阪神大震災と関東大震災の資料を読み込んでいるようで、ここで描かれる大震災の姿はかなりリアルだ。いわゆるお役所仕事を打ち壊し、画期的な対策を打ち出していく主人公のセイオの姿は読んでいて胸がすく。


小川 一水
復活の地 2

大地震で壊滅状態となった国家の再生を描く群像劇。第二巻。


一官僚だが帝都復興院の総裁に任命された主人公のセイオ。理想主義的な帝都再建計画を掲げるが、その強引な手法に民衆の反感が高まる。どれだけ適切な震災対策を打ち出しても、全ての人を救えるわけもなく、震災で起きた被害の全ては、その対策の責任者であるセイオの責任だと非難が集中。本来はその責任を追うべき政府首脳もセイオに援助の手を差し伸べることなく、他国列強との政治的駆け引きを念頭に事態を見守る。


1巻では快刀乱麻を断つ活躍のセイオだったが、この2巻では一気に苦境に陥る。SF設定だが、国家間の力関係をみていると本書のモデルは関東大震災時の日本だろう。震災から復興が始まり、混乱は収束しつつあるが、1巻よりも未来に希望が持てないだけに厳しい内容となっている。



小川 一水
復活の地〈3〉

大地震で壊滅状態となった国家の再生を描く群像劇。第3巻。


帝都復興院総裁という権力を失った主人公のセイオ。皇権排除を画策する首相は星外進出を見据えた軍事増強を推進していく。あまり詳しく書くとネタバレになるからこの程度で。


この物語は群像劇というだけあって、様々な人たちについて描かれている。摂政、首相や軍人から大使、科学者、スパイ、新聞記者、ボランティア、異民族。それぞれが各自の理念にしたがってバラバラに行動していたが、この3巻になりそれらが繋がり始める。1巻では超人的な活躍をした主人公が独断で危機を乗り切ろうとしたが、3巻は違う。いくら権力を握ろうとも、個人の力には限界がある。国民のひとりひとりの意識、行動こそが危機を乗り越えるという展開だ。全3巻という長さだけあって、登場人物の成長していくところが魅力的だ。