- 福澤 徹三
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夏は怪談だろうということで、先日読んだ百物語アンソロジー『闇夜に怪を語れば』に収録されていた『怪談』(本書では『怪の再生』というタイトル)があまりに恐ろしかったので、期待を込めて購入。
ホラー短篇など読んでいて思うのだが、たいてい怖くない。小説より『新耳袋』などの実録怪談のほうが怖い。ということで本書のなかでは本当にあった怪談話風の短篇『怪の再生』と『仏壇』が本気で怖い。本書の裏表紙の紹介文には「深夜、ひとりで読んで欲しい恐怖小説の傑作!」とある。僕は形から入るので、もちろん深夜、ひとりで読んだ。部屋の蛍光灯も消して、明かりはスタンドのみ。
『怪の再生』実録怪談ファンの間に福澤徹三の名を知らしめた傑作。数人の若者がお互いに知っている怪談話を順に話していくという百物語風の構成。僕は恐怖というのは蓄積するものだと思っている。怪談を連続して読んでいると、ひとつひとつの怖さは少なくても、あきらかにそれは蓄積されていく。一心不乱に読んでいて、ふと気づくと部屋の空気がさっきまでと違うように感じる。いつ幽霊がでてきてもおかしくない気がしてくる。そういうふうに、この短篇はどんどん恐怖が蓄積され、ラストは臨界点を突破してしまう。…怖いので再読を断念。
『仏壇』ホステス同士で同居しているのだが、ルームメイトがある日、田舎から仏壇を持って帰ってきたという。その仏壇の様子が変だとホステスのひとりが主人公にたびたび相談するという展開。恐怖体験を聞くという形式の実録怪談風だが、途中から主人公も巻き込んだ怪談話へと展開して、ラストは恐怖と狂気が入り混じった世界へ突き落とされる。
解説で東雅夫は「初読の際、作中人物と同様、思わず後ろを振りかえった記憶がある」と書いている。僕も後ろを振りかえった。誰もいなかった、よかった。
この2編にでてくる怪談話は実際に著者が聞いた話をもとにしているらしい。実録怪談と恐怖小説の融合が見事に成功した短篇と言える。この他の短篇もレベルが高く、怖さはこの2編ほどはないが、どれも凝った作品で、著者の恐怖小説家としての実力を伺える力作揃い。現役の恐怖小説作家のなかではトップクラスだろう。恐怖小説ファンは必読。
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