- 上原 隆
- 友がみな我よりえらく見える日は
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買い着て妻としたしむ
石川啄木
本書のシリーズ第3弾『雨にぬれても』が本の雑誌が選ぶ2005年上半期エンターテイメント・ベスト10の第4位に選ばれた。ノンフィクションだが、作者のでてこない短い作品は見事な小説だということで異例のランクイン。
本書には社会的には「敗者」もしくは「弱者」と呼ばれる人々のことが記されている。ホームレス、離婚、うつ病、失明、登校拒否、リストラ。そんな厳しい現実の世界を淡々と記す。だが、読後感は悪くない。
著者は、酔ってマンションから落ちて失明をした友人のところへ見舞いに行く。容姿が悪いから46年間、男性とつきあったことのないと言う独身OLの話を聞く。新宿のホームレスと、しばらくの間いっしょに暮らす。精神世界に生き、それ以外の全てを捨てた芥川賞作家のもとを訪れる。
著者はその場にいるはずなのに、読んでいるうちにその存在を忘れてしまう。日常の風景だけが続く。いろいろな問題をかかえながらも、今まで生きてきて、これからも生きていくだろう姿がそこにある。苛酷な人生を歩む人たち。社会や時代のせいにせず、自分の主観も入れず著者はその現実の世界だけをここに書き記してある。
この時代に生きる普通の人のことが普通に書いてある。著者は、時代が悪いとか、戦後民主主義が悪いとか日本人はどうしてしまったんだとかそんなことは一切書かない。普通の人が今どうやって生きているのか、そのことを演出を排して記録していくのだ。
(中略)
だが「普通」というこれまでの概念はもうどこにもない。それは多様化したわけではなく、近代化の終焉と共に消滅したのだ。だから「普通」というカテゴリの中で、「みんなと同じように」生きていける人は誰もいない。一人一人が、その人の属性、資源を利用して生きていかなくてはならない。そして、現代においては、そのことが「普通」なのだ。
そういう意味で、この本は貴重だ。(中略)この本は、現実を生きている人のことを正確に伝えている。
(解説・村上龍より抜粋)
僕はこの本を古本屋で買った。読み進んでから「うつ病」の章のページの端が折ってあるのに気づいた。
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