『君たちに明日はない』垣根涼介/新潮社 | 砂場

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垣根 涼介
君たちに明日はない

山本周五郎賞受賞作。今回は『明日の記憶』と並んでの受賞なので、サラリーマン小説が同時受賞ということになった。昨年は「ワイルドソウル」が三冠受賞するなど話題の垣根涼介だが、僕は今回初めて読んだ。装画・井筒啓之。装丁・新潮社装丁室。


リストラ請負会社。依頼を受けた会社に行き、リストラ候補の社員と面接をして自主退職を了承させるという仕事だ。この会社の有能な若手社員と、気の強い年上の恋人、リストラ候補となる人たちがこの物語の主人公だ。


僕はこの本を『死神の精度』の次に読んだ。読み始めてから、その偶然に気づいた。「死神」と「リストラ請負人」は似ている。


どちらの主人公もクールに対象となる相手と対応をする。どちらも仕事だから、死神が相手を助けることはほとんどないし、リストラ請負人も説得の手を緩めることはない。といっても、本書の主人公はリストラ候補者をないがしろにしているわけではない。対象者の経歴や仕事内容など綿密に調べた上で説得に挑む。人の人生を左右するのだから、それが礼儀だと思っている。これは『死神の精度』の主人公の死神と同じだ。


リストラという重いテーマを扱うにしては軽すぎて物足りない感はあるけど、読みやすく一気読みもできる内容。安っぽいドラマのような展開で、突っ込みを入れながらテレビをみているような読み方をしてしまったが、楽しめたことは間違いない。「仕事」と「恋愛」、「会社」と「恋人」、「出会い」と「別れ」の物語。


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