『死神の精度』伊坂幸太郎/文藝春秋 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

伊坂 幸太郎
死神の精度

僕のなかでは伊坂幸太郎の全作品のなかでは最下位。伊坂幸太郎の持ち味である洒落た会話の切れ味も悪く、全体の構成は上手いのだが、短編ごとの内容が薄くて物足りない。


「オール読物」に掲載された短編をまとめた連作短編集。表題作『死神の精度』は第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞。装丁は池田進吾(67)。


主人公はクールでちょっとずれている死神。彼が仕事にやってくるときは、いつも雨が降っている。ミュージックが何よりも好き。七日間、情報部から指示された人物を観察して話を聞いて、報告する。報告の種類は二通りのみ。「可」もしくは「見送り」。


だが、ほとんどの報告は「可」。死神なのだから、当然のことだ。だから、観察などせずに七日間を適当に過ごして「可」と報告してもいいのだが、主人公の死神は真面目に観察して話を色々を聞いて、その人物のことを詳しく知ろうとする。結局は「可」と報告するのだが、これが死神の仕事だと主人公は真面目に働く。


単行本を全作品を読んでいるが、最も軽い読み応え。クールに淡々と描かれた物語で、死神なのに、対象となる相手の死ぬシーンが描かれず、盛り上がりに欠ける気がするが、そういうスタンスなのでしかたない。読み進めていくうちにこの淡々とした雰囲気に慣れてきて、最後の2編で挽回して及第点。


主人公の死神がクールで人間の複雑な感情を理解しないというのが売りなのだが、残念なことにいまいち成功していない。「死」という深いテーマを扱いながらも、掘り下げかたも浅くて、伊坂の持ち味である気の利いた会話の部分が、どこにでもあるような薄っぺらな言葉になってしまっているものが多い。逆に同じような設定だが、人情味溢れる死神が主人公の傑作漫画「死神くん」が久しぶりに読みたくなった。残念な作品だ。