『パワープレイ』内藤誼人/SB文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

著者: 内藤 誼人
タイトル: パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術

何気ないしぐさや行動で、相手を思い通りに動かす『パワープレイ』
ビジネス書業界に革命を巻き起こした禁断の書、待望の文庫化。
(本書の帯より)


僕が小学生の頃に『100万$キッド』というギャンブル漫画があった。うろ覚えだが、少年が世界の強豪ギャンブラーと勝負するストーリーで、ある時、相手の館に招かれてポーカー(?)の勝負をすることとなった。イスに座った主人公は勝負の間、試合に集中できずに不安な気持ちになる。なぜかと言うとイスの足の一本がわずかに削られていて、ガタガタして落ち着かない…。という子供だましのストーリー。本書にも交渉で相手を惑わす作戦としてこの方法が書かれている。すごい!100万$キッドだ!とよくわからないテンションで購入。


本書では心理戦を有利にするための手段がいろいろと紹介されている。雑誌『日経ビジネスアソシエ』で著者が今月からパワープレイの連載を始めたのだが、今回は「肌を焼くと爽やかに見えて印象がいい」という話だった。「パワープレイ」の名前が可哀相だ。どうせなら、もっと力技の心理戦で相手をねじ伏せる手法を紹介して欲しい。使うか使わないかは別として、お互いにパワープレイを駆使して戦うビジネスマンは想像すると楽しい。


本書で紹介されている事柄も「パワープレイ」という力強いネーミングからはかけ離れたものが多くて、期待はずれ。序盤に紹介してあるのが「半袖シャツを着ると、パワー戦で負ける」。


歴史的に考えてみると、「薄着」をするのは、奴隷や下層民である場合が多く、上流階級や王族になるほど「厚着」をする傾向があった。つまり、洋服をたっぷりと着込むのは、パワーがある証拠とみなされてきたのである。


まあ、そうだろうなあ。本書に書かれていることは、ほとんどこんな印象だ。だが僕は「100万$キッド」のような漫画的世界を期待しているので、「なに! では、内閣主導の『クールビズ』など日本企業戦士の弱体化ではないか!これでは経済だけだ頼りの日本企業が欧米列強との交渉に敗れてしまう……これは内閣に裏から手を回したスカル&ボーンズ(秘密結社)の陰謀に違いない」と過剰に反応しておく。パワープレイは面白いなあ。


全体的には交渉のときのちょっとしたテクニックといったものが多く(秘書と仲良くなれとか、笑顔が大事とか)、わざわざ「パワープレイ」と呼ぶほどのものは、ほとんどない。というか相手を説き伏せることのない書店員の僕には関係のない話だった。『100万$キッド』につられて買った僕が間違っていたのだが、この「パワープレイ」というもの、本来はチェスなどの勝負で心理的優位に立つ方法として研究されてきたものらしく、それをビジネスに応用しているようなので、あながち間違いでもないか。