眠い町 | 砂場

砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。



著者: 小川 未明
タイトル: 小川未明童話集

昨夜は友人と酒を飲んだためだろう。僕は喉の渇きで目を覚ました。アルコールの分解には水分がいる。冷蔵庫から烏龍茶を取り出して飲み干し、目を細めて時計を見上げる。僕はいつも8時35分に家を出る。時計の長針は真上を指していた。目覚まし時計に僅差で勝ったようだ。僕は普段どおりに煙草を吸ってから身支度を整えて、家をでる。

いつもより少し薄暗い町。橋の上で必ずすれ違う人がいるけど、今日は見かけなかったような、と坂を下りながら思う。どうも頭がはっきりしない。酒が抜けていないのか、睡眠不足のためなのか。昨夜は終電で帰宅したが、眠りについたのは深夜3時を回っていた。二日酔いというよりは夢見心地に近く、僕はフワフワと自転車を漕ぎながら、勤務先の書店へと向かった。

『町はだらだらとして、平地の上に横たわっているばかりであります。しかるに、どうしてこの町を「眠い町」というかといいますと、だれでもこの町を通ったものは、不思議なことには、しぜんと体が疲れてきて眠くなるからでありました。』眠い町/小川未明

入口のシャッターを開けるためポケットから鍵を取り出していると、運送会社のトラックが駐車場に入ってきた。僕は目を疑う。今日の荷物が、僕の出勤時間に到着するなどありえない。腕時計を見ると7時50分。それでもまだ僕は状況が理解できない。時計を睨みながら眠い頭を必死に叩き起こす。僕の背中に運送会社の兄ちゃんの声がかかる「今日は早いですねー」。この言葉では眠っていようが疑問の余地もない。僕は一呼吸おいてから、笑顔で振り返り「はい、ちょっと仕事がありまして」と、寝言を言った。