深夜0時過ぎの仕事の帰り道、僕は見晴らしのいい橋の上で立ち止まって目を凝らす。町並みの向こうに、少し明るくなった場所が見える。遠目から見る強力なライトの光は、空に向かって伸びていき、夜の闇に飲み込まれていた。今夜も夜を徹して作業をするのだろう。あの光の柱の下には、まだ閉じ込められた人たちがいる。じっと見ていることに耐えられなくなった僕は自転車のスピードを上げて、その場を立ち去る。平穏だった僕の町は、今、日本で最も注目を集める町となった。
もしこれが、僕の知らない町で、僕が乗ったことのない電車なら、もう少し冷静にニュース番組をみることができるのだが。僕はあの線路脇の道を、自転車で何度も走ったことがある。見知った場所だから、テレビで流れている事故現場の切り取られた映像をみても、僕にはカメラに写っていない隣の風景までも見えてしまい、そして、映像はどこまでも広がっていく。それは、僕の家、僕の部屋、そして僕自身にまで繋がってくる。ここはあの事故現場ではないのだから落ち着け、と僕は自分に言い聞かせる。近すぎて、リアルすぎる。
次々と増えていく死亡者数は、まるで阪神大震災のようだ。僕の二十歳の誕生日だった1月17日は忘れようもない。そして三十歳になり、4月25日が今回の脱線事故。僕が四十歳になった年に、近くで大きな事故が起きで欲しいと思う。遠くならいいという分けではないんだけど、もうこういうのは本当に嫌だ。・・・落ち着け。
福知山線脱線事故、27日午前3時の段階で死者は82人。心からご冥福をお祈りします。