【後編】伝統のフライ級は取り戻せるのか? | ボクシングライフW

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趣味と言うよりライフワークになっているボクシングについてとりとめもなく感じたままに

前々回の続き。


伝統のフライ級の灯を取り戻す候補者は多い。


日本王者 ユーリ阿久比、OPBF王者  桑原拓、WBOアジア王者 加納陸が世界ランカーとして名を連ねる。


筆頭格は阿久比だろう。

現OPBF王者 桑原にKO勝ちしている。



ミニマム級から上げてきた加納は精神力のある我慢強いボクサーだがユーリ阿久比とはパワーの差が大きい。

ではユーリ阿久比が次の日本人世界フライ級王者になれるかと言えば容易ではない。

特にIBF王者 サニー・エドワーズ、WBA王者 アルテム・ダラキアンとは相性が悪そう。空回りさせられる可能性が高い。

WBC王者  フリオ・セサール・マルチネス、暫定王者 マックウィリアムス・アローヨは好戦的なパンチャー。ユーリ阿久比とは噛み合うとは思うが、自慢のパワーもこの2人に比べれば霞んでしまう。

阿久比は中谷潤人、矢吹正道、2人の後の世界王者と対戦経験がある。だがマルチネスやアローヨの経験には及ばない。

寧ろ可能性が高いのは桑原かもしれない。 

デビュー当時は井岡2世と呼ばれただけあり、ブロッキングの丁寧な堅実なボクサーだった。

だがユーリ阿久井に破れてからはスタイルチェンジが見られ、タイトルを獲得したジーメル・マグラモ戦はとにかく貰わない事に徹し、井岡2世ではなく、サニー・エドワーズ2世になってしまった。

本家であるエドワーズと距離感の優れたダラキアンには勝てないかもしれない。だがマルチネスやアローヨの様にガンガン前進するタイプには噛み合うかもしれない。

ただ、あれだけ逃げ回るボクシングは好きではない。仮に王者になっても人気は出ない。桑原はユーリ阿久井にKOされた悪夢を払拭し、井岡2世と呼ばれた頃の足よりブロッキング主体のボクシングに戻ってほしい。

フライ級にはもう一人王者候補がいる。
前WBAライトフライ級王者 京口紘人だ。

寺地拳四朗戦は面白かったが、京口が支配した時間は僅か40秒だったりする。会場では長く感じたがAmazonprimeで見ると意外と短い。勝てる気がしないであろう寺地との再戦は望まないだろう。
ならば三階級制覇に舵を切るかもしれない。

ただ、誰になら勝てるか?
非常に難問だ。

ユーリ、桑原、加納、京口でトーナメントでもすれば嬉しいのだが、そんな一部にしか需要のない事をするプロモーターはいないだろう。  

個人的には政治力の差で一番世界挑戦に近いのは桑原、ランキング的に海外から声がかかりそうなのは阿久比に思う。

もしかしたら阿久比はWBOフライ級王座決定戦の勝者に指名挑戦出来るかもしれないがジェシー・ロドリゲス相手だと流石に分が悪い。

さて、ここまで書きながら白ける結論を書く。

実は世界フライ級タイトルは比較的容易に奪回できる。日本の精鋭達、ウェイトに余裕がありそうな井岡がクラスを下げ、寺地がクラスを上げればあっさり日本人世界フライ級王者は誕生しそう。

落とせるかはわからないが田中、中谷がフライ級に戻っても奪回出来る可能性は十分にある。

しかし、今のフライ級タイトルはライトフライ級やSフライ級より価値があるものではない。

何故なら「伝統のフライ級」と言う言葉が死語になり、クラシック(オリジナル)8階級の一つでありながら最早、そこに価値を見出だす人は少ない。

結局はフライ級が日本にとって特別なクラスではなくなった。15年間日本人がフライ級の覇権を握り、それを手放す事になってもただそれだけの事。誰も気にしていないのかもしれない。